Round 5 魔女は何度でも巻き戻す、俺も巻き込まれる
「ふふ……もう一度!」
その後コスプレ女は当たりを重ね、確変終了が近づくと杖で『
その度にこちらのチャンスタイム回数も復活している。ありがたいっちゃありがたいのだが、自分の方は一向に当たる気配はない。そもそも319分の1だから当たり前の話ではあるが……こうもヒキが弱いと、
「あの~魔女さん?」
「ん? 信じる気になりましたか?」
「あー……なんとなく」
さすがに自分の台の状況すら戻っていることを確認したら信じるしかない。
しかし単純に過去に戻すだけなら結果は同じなのではないか?
「一度時間を戻した場合、先に辿っていた結果ではなく別の未来へ進むわけです。なので……」
「当たりを掴める?」
「そういうことです」
すごいとは思う、が。
なぜそれをパチンコで使う?
銀髪の女は真剣な眼差しで台を見つめている。マジメなのだろうと印象を受けるものの、ここはパチンコ屋である。
もっと別のことに使えるのではないかと思うのだが……
「今の魔力ではパチンコ台にかけるのが精一杯なので」
心を見透かされ、女から先に言われる。
いきなりスケールが小さくなったな。
「でも、これ繰り返してれば永遠と続くじゃん。やばくね?」
「魔法はそれほど都合よくは……おや、どうやら違う運命を辿れたようですね」
「あ? ……あ」
女の台にうつつを抜かしていると、自分の台がようやく重い腰を上げた様子。激アツのリーチだ。
「ツキが回ってきたかぁ⁈」
確定音も鳴ってるし一安心だ。
「おっと、駆け抜けそう。失礼」
「え、おい! 待って!」
ぐにゃり、と視界が歪む。
ぼんやりした意識が戻ると、時短の回数が100に戻っている。
「ふふ、魔力がある限り駆け抜けは許しません」
「許しません、じゃねーよ! 確変引き戻しがぁっー!」
ぬか喜びさせやがってこのコスプレ女ぁっ!
「良いでありませんか、まだ未来は確定していませんよ」
「確定してたんだよ! 確変がな!」
初号機君、走るだけなのはやめて〜
無情にも319分の1を引くこともなく、チャンスタイムは終了を迎える。
「ま、魔法使いさん、巻き戻しできるかな?」
「んー……魔力切れですねぇ」
「そこになかったらないですねー」みたく女は答え、呼び出しボタンを押した。
「ちきしょーっ!」
「さてと、そこそこ出玉も作れたので帰ります」
「とっとと帰れ! インチキ女!」
「できればパチンコ攻略家とお呼び下さい」
「パチンカスの魔女の間違いだろ」
「おやおや、このままでは何されるかわかりませんね。くわばらくわばら……」
店員とドル箱を引き連れコスプレ女は消えていく。
「たくよぉ、変に期待させ……うぇ⁈」
レバーが震えて目の前の画面には7ふたつ。偶然か?
魔女のいる方を見つめると、奴は鼻先に指を当てて不敵に微笑む。
「いや、俺の引きだな」
これ以上巻き込まれてたまるか。
無事確変に突入し、7000発ちょい獲得。もう少し続かないものかと、残り30回を迎える。
「あーあ、リセットされな……」
魔女の攻略法か……マジでやべぇな。
「いやいや、あれはダメだろ」
と思いつつも若干信じつつある自分もやばいなと自重。
特に熱いリーチになることなく確変は終わり、その日は負けずに済んだ。
しかし、時間にまで干渉するとは……
単なるインチキで片付けるレベルじゃない。
「気になる」
どうせまた来ればいるだろ。
その日は深追いせずそのまま終わり。奮発して焼肉で1日を締めた。
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