第22話 感謝
「……そうか」
父さんは腕を組み。目を瞑った。
しばらく考える素振りを見せた後……目を開いた。
「これは言うべきか迷っていたんだ。……しかし。言っておこう。お母さんはな。離婚した後、……今までの反動かのようにお酒に溺れた。お父さんもそれは良くないと思ってお母さんの友達とかに話しかけたんだが……どうやら上手くいっていないらさい。佳音が会った時も飲み明かした次の日で、二日酔いで耐えきれなくなり仕事を早退して帰る途中。公園で休んでいたらしい」
「そう……だったのか」
「……加えて言うと。離婚の際、佳音が望まない限り会わないよう他の町に住むよう話していたんだが。わざとなのか……忘れたのか分からないが」
父さんの言葉に。俺はため息を吐いた。
「……二日酔いの時は酔っている時ほどではないが、多少性格は荒くなっている。でも、お酒が抜けている時はまだ……ちゃんとお母さんのままだ。佳音が今の話を聞いてもまだ会いたいと思うなら……お母さんが確実にアルコールが抜けた時に会わせる事を約束する」
俺は父さんの言葉にほっとし……頷いた。
「お願いだ、父さん。会わせてほしい」
「分かった。……一応お父さんも着いていこう」
「ああ、ありがとう。父さん」
その後。父さんが母さんと話し合い。会う日は次の週末。土曜日となった。今日が火曜日なのでそう遠くない時期だ。
この事を陽葵姉達に話すと、皆着いてくると言っていたが。これは俺がやらなけれはいけない事だ。断ると不安そうにしていたが、大丈夫だと押し切った。
◆◆◆
あの後。俺は月雫姉に作ってもらったスープを飲み。お風呂へ入り、早々に寝る準備をした。
……寝る準備をしていたのだが。
「え、ええと。俺は一人でも大丈夫だぞ?」
「ダメだよ。また怖い夢を見ちゃうかもしれないじゃない 」
陽葵姉達が一緒に寝ると言ってきたのだ。
「ん。次は私が甘やかす」
「佳音が寝るのは邪魔しないようにね」
空姉の言葉を月雫姉が注意する。それを苦笑いしながら見る。
三人ともパジャマを着けている。……しかし、一部分はとてもピッチピチとなっている。
出来るだけそこから視線を外すようにしていると……空姉が俺を見てニヤリと笑った。
「……気になる?」
空姉はわざとらしく。プチリと……ボタンを一つ外した。
「そ、空姉……からかわないでくれ」
「……ん。からかってないよ?」
空姉がとてとてと歩いてきて……ぴとりとくっついてきた。
「そ、空姉? なに……を」
その時。俺は気づいてしまった。
空姉。着けてない。下の方。
「……前、陽葵お姉ちゃんがそうしてたから。のんちゃん、こういう方が好きかなって」
「ち、ちがっ……その。陽葵姉は……下の物は持っていないだけで」
「……? 持ってるよ?」
「……へ?」
空姉は振り向き。じっと陽葵姉を見た。
「ナイトブラ、持ってるよね? 陽葵お姉ちゃん」
空姉の言葉に陽葵姉の顔が固まる。
「……陽葵姉?」
「か、佳音くん。ち、違うんだよ。前言った通り私に似合うのが無くてさ?」
「でも今陽葵姉、着けてないよね」
月雫姉がそう言って陽葵姉の胸を鷲掴みにした。大きく、形の良かった胸がふにょんと……スライムのように形を変える。
「……やっぱり」
「ちょ、月雫……あんまりさわら、ひゃんっ!」
「むぅ……やっぱり柔らかさは陽葵お姉ちゃんが1番? ……月雫お姉ちゃんはハリだよね」
「ちょっと、空!?」
「あ、月雫お姉ちゃんも着けてない」
そんな仲睦まじくも……目に毒な光景から目を逸らす。
「ん。これでのんちゃんが私のおっぱいを揉んで、陽葵お姉ちゃんがのんちゃんのおっぱいを揉んだら永久機関の完成だね」
「そうはならないだろ……」
相変わらずの空姉の言葉に俺はそう言いながら。ベッドへと座る。
すると……三人はじゃれあいをやめて。俺の隣と後ろに座った。
陽葵姉と月雫姉が俺の隣に。空姉が後ろからもたれかかってきた。
そのまま俺は……なんとなく。ボーッとしていた。数分ほどそうしていただろうか。俺はふと、視線を感じた。
陽葵姉と月雫姉……そして、空姉がじっと俺の顔を覗き込んできていたのだ。空姉に至っては後ろから俺に抱きついて。すぐ横から見てきていた。
「……どうした?」
「ん。見てただけ」
「私も」
空姉は俺の肩に顎を乗せ。月雫姉が俺へと寄りかかった。
そんな俺達を見て……陽葵姉が微笑む。
「ふふ。ちょっと早いけど。寝る準備だけしとこっか」
その言葉に俺達は頷き。寝る準備をする。……とは言っても、もう後は電気を消すぐらいなのだが。
幸い、ベッドは大きめのがある。高校生になると大きくなるだろうからと父さん達から貰ったものだ。
「……本当に、ベッドが大きくて助かったな」
俺がそう言えば、空姉がふふんと胸を逸らした。
「ん。裏話をすると、のんちゃんのベッドを大きくしたいって言ったのは私達だったりする」
「……そうなのか?」
俺がそう言うと、陽葵姉が苦笑いをする。
「……え、えっとね? 佳音くんが高校生のうちには思い出させてあげたいなって思ってたから」
「そういう事。べ、別に? 佳音とえ、え、えっちな事とかしたいから買って貰った訳じゃないし?」
「……月雫お姉ちゃんのムッツリ」
「む、ムッツリじゃないから!」
その姉妹の会話を聞いて頬が緩みながら。俺は立ち上がる。
「それじゃあ電気消すぞ。良いか?」
「うん、大丈夫だよっ!」
「私も。大丈夫」
「ん。私も」
三人が頷いてくれたので俺は電気を消した。途端に部屋が暗闇に包まれる。
「佳音。転ばないようにね」
「ああ、ありがとう」
月雫姉に手を引かれ。俺はそのままベッドに倒れ込んだ。
「……これ、どういう並びなんだ?」
「左は私」
「ん。右は私」
「私は空の隣に居るよ」
左に月雫姉。右に空姉と陽葵姉が居るらしい。
「うおっ……」
「んふふ」
いきなり。右半身が柔らかいものに包まれた。空姉に抱きしめられたのだ。
「あ、空! ずるい!」
かと思えば。左半身も暖かく柔らかいものに包まれた。加えて。頭も暖かい……手のひらで撫でられている。
そうして揉みくちゃにされながらも。俺は眠ったのだった。
その日。悪い夢を見る事はなかった。……ただ。朝は空姉が上に乗っていて、金縛りをされた後のような目覚めだったが。
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