第2話 お姉様
女神様が言う、百合が咲き誇る世界へとやってきた私。
内心、大喜びしていると女性が私に質問する。
「ところで君は名はなんというのだ?」と。
「あ、えっと!私の名前は白咲百合って言います!」と元気よく答える。
すると「シロサキ…ユリ…。ユリ…。ふむ…。」と考え込む女性。
あ、あれ…?ど、どうかしたのかな…。と心配していると、そんな私に気づいたのか「ああ!すまない!気にしないでくれ!」と慌てる女性。
続けて「ユリ!うむ!良い名だ!可憐な君に良く似合っている!」と微笑む。
私はドキッとしながら、人生で初めて可憐だなんて褒められたことで照れてしまう。
そんな私に「ふふ。ほんとに可憐だ。それに君のそのペンダント。それも可憐な君に良く似合っている。百合の蕾だろう?」とさらに褒めてくれる女性。
も、もしかして私今口説かれてる!?なんて思いながら。
あれ…?
私こんなペンダント知らないんだけど…。
いつのまに付けたんだろう…。
と考えてしまう。
だけど、まぁいっか!
おかげで褒めてもらえたし!
と思うことにして「えへへ。ありがとうございます!たぶんそうですね!」と答えると今度は私が女性に名前を尋ねる。
すると「わたしの名はフーリ・アイデンスという。フーリでも。アイデンスでも。好きな方で呼んでくれて構わないぞ。」という女性。
やっぱり日本の名前と違うんだと感動しながら女性の呼び方を思いつく。
それは…。
「あ、あのそれじゃあ!お姉様!とお呼びしてもいいですか!?」と身を乗り出して提案する。
そんな私に「お、お姉様!?」と驚く女性。
「あ…。だ、だめですよね…。初対面なのに馴れ馴れしくてすみません…。」と落ち込む私。
ああああああああああああ!
失敗したああああああああああ!と心の中で叫んでいると。
「いや!お姉様と呼んでくれて構わない!だから落ち込まないでくれ!」と優しくしてくれるお姉様。
「いいんですか…?」と尋ねると「ああ。もちろんだとも。」と頭を撫でてくれる。
正直なんでこんなに優しいのかは疑問だったけど、お姉様と呼べることとなったしいっか!
「さて、お互いの名を知ったところで。君はここでなにをしていたのだ?」と質問するお姉様。
「え、えっと…。」と言葉に詰まる私。
なにをしていたかと聞かれたら、まだここに来たばかりでなにもしてないし。
それじゃあ、どこから来たんだと聞かれたら別の世界からと答えるしかないわけで。
でも、そんな話信じてもらえるわけないし。
うーん!困った!なんて答えよう…!
と悩んでいると「もしかして、君は…。記憶喪失なのか!?」と心配するお姉様。
なんだかすごい勘違いされてるけど今は「じ、実はそうなんです…。」と心の中で嘘ついてごめんなさい!と謝りつつ答える。
すると「そうか…。それは辛いだろう…。」と悲しそうな顔をするお姉様。
そんなお姉様に罪悪感でいっぱいになり謝ろうとした時だった。
「そうだ!」となにかを閃いたお姉様。
「ど、どうしたんですか…?」と尋ねると「わたしの家に来ないか!?」と提案するお姉様。
「お、お姉様のお家ですか…?」といきなりの提案に驚く私。
「ああ!ほら!あそこにお城が見えるだろう?そこの城下町にわたしの家があるんだ!」と指差すお姉様。
言われるまで気づかなかったけどたしかにお城が見えて。
ほんとに別の世界に来たんだと改めて実感する。
さて、お姉様の提案なんだけど。
「で、でも見ず知らずの私なんかの為に…。悪いですよ…。」と遠慮すると「そんなことはない!それにこのまま一人になるのは心細いだろう!」と真剣な表情のお姉様。
たしかにそれはそうで。
正直この世界に来たばかりの私は行く当てもないし。
だから「お願いします!」とお言葉に甘えることにした。
というわけで私はお姉様のお家へとお邪魔することになったわけなのだけど…。
「では行こうか!」とお姉様が立ち上がり。
「はい!」と私も立ちあがろうとした瞬間、身体がフワッと浮く。
なにが起こったかわからないでいる私。
どうやらお姉様にお姫様抱っこされているようで。
「え、あ、お、お姉様!?」と驚いていると「ふふ。まだ無理はしてはいけないよ。このまま運んであげるからね。」と微笑むお姉様。
「そ、そんな悪いですよ!そ、それに重くないんですか!?」と遠慮する私。
すると「大丈夫。綿毛のように軽いよ。だからこのままでね?」とやっぱり微笑むお姉様。
人生初のお姫様抱っこと、お姉様の微笑みにトロンとしてしまう私は「はい…。」と答える。
そんな私に「ふふ。良い子だ。しっかり捕まっていて。」と微笑むお姉様。
「はい…。」とやっぱりトロンとした私はお姉様の首へと腕を回し、抱きつく。
あぁ…。お姉様の素敵なお顔がこんな近くに…。
お城がある場所までずっとこのまま眺めていられるなんて…。
なんて考えながら幸せを噛み締める私。
だけど、そんな幸せは長く続かなかった…。
「それじゃあいくよ!」とお姉様が言うと、なんだか下から風が吹いてきて。
一気に飛び立つお姉様とお姫様抱っこされたままの私。
「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!なにこれぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」と叫ぶ私の声は遠くへと流れ。
その場には丘に咲く、風に揺れる百合の花だけが残っていた。
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