02

 てかッ、


 お前もか。マジでかッ。


 僕は、今、戦闘どころじゃない。このうんこが魔王のものであるならばと仮定を立てて、もしそうならば、どういう意味があるのかと推理をしているところなわけだ。そんな大事な場面で戦闘などという下卑たものに参加できるはずがなかろうもん。


 魔王などという非現実的なものよりもな、このうんこの方が現実味があるワケよ。


 僕にとってはな。うむ。


 では、このうんこには、どういった意味があるのかだが。


 まあ、第一に考えられる事は僕のテンションを下げ、戦闘から離脱させる為の罠。


 第二に。


 てか、お前、うるさい。


 僕の周りをブンブンと飛び回り、まとわりついてきた謎肉的なハエを叩き落とす。


「ナイス、勇者ッ。その調子で頼むぜ。ボクも戦闘に戻る」


 超爽やかな笑顔で強気女子な赤毛のアン(アンは本名)が、また右親指を立てる。


 ……?


 なんの話さ。魔道士娘。


 僕は、このうんこが、どういった意味を持つのか、それだけを知りたいワケだが?


 それ以外は、もはやどうでもいい。さっき突っ込んだ剣士が死ぬか、それとも永遠にうんこの謎が解けないか、どちらか選べと言われたら、一切合切、迷わず、うんこを選ぶくらいにな。うおっ。しまった。虫メガネがあればな。本当にしまったな。


 じっくりと観察すれば、新事実が判明するかもしれないのにチャンスを逃したぞ。


 クソッ!


「ぐほっ」


 剣士が一歩引き、片膝をついてから、こちらを見つめる。


 上目遣いでジッと、こっちを見つめてくる。


 えっ? もしかして僕ですか。僕はダメですよ。今はね。


 うんこに夢中で、らんちゅうなんです。はい。だから、ごめんして。


 更に追加で、懇願する視線を二つも感じる。


 だから。


 だから。ダメですって。


 僕、今、うんこの謎に挑戦しているんですから。もはや脳内は、真っ茶色に染まってですね。この緊迫した場面でのうんこの役割が、どういったものなのかという、そういった真理をも超えた原理というのかな、そういったものをねぇ……。はい。


「とっとと戦え、阿呆ッ」


 と魔道士なアン(アンは本名)が、僕の後ろ頭を小突く。

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