08 レイラの愛した零
葛西臨海公園に多数のミサイルとりゅう弾砲が弾着していた。
《第二波攻撃効果なし、目標の進行を食い止められません》
《現代兵器が通用しないなんて…いったいあれは何なんだ!》
ブラック・オベリスクはそのまま
早く
そんな設定を作った二人は今、
「ぜー、はぁ…、ぜー、はぁ…」
そんなヘロヘロの二人を見て、新事研で最悪のマッドサイエンティストである三佳は涙を流して喜んでいた。
「すごい、生きてる」
今まで、神託装置に入れられた生命体が無事に生存して帰ってくることがなかった。しかし、地面に寝転がる二人は元気そうなような様子だった。実験の成否によらずこれは一歩前進。今まで一歩も動かなかったのだから奇跡の一歩と言えた。
「ジョン、ポロ、ミーヤ、レオン…中略…。君たちの犠牲は全て無駄ではなかったんだ…」
今までお世話になったモルモットたちの名前を読み上げる三佳。その全てを成し遂げた表情。それを眺める後輩矢板の冷たい顔。
「主任、実験動物に全部名前つけるのサイコパス性高まりますからやめませんか?」
そんな奇跡の実験成功の傍らで、しかし、ブラック・オベリスクはなおも進み続けるのだ。
「う、うぅ…」
「君たち、体調は大丈夫かい?」
矢板が心配をするも、二人は裸で苦しみ続けていた。
「あの、そろそろ避難を始めましょう。ここも時間の問題です」
「ま、待ってください。私がなんとかしますから!」
先に立ち上がったのはレイラだった。夢幻も負けじと立ち上がる。
「力が宿った感触がある。きっと、いけます!」
「いけると言っても、どうにもならないでしょうに」
「それは違うよ後輩君。二人が授かったのは想像を具現化する力。あらゆる物理法則に干渉する間違いなく地上最強の力を獲得しているはずだ」
急に活き活きし始める夢幻とレイラと三佳。
そして、レイラが再び構え唱える。
―法則改変、その巨体を司る動きの源泉を経ち、大地を蹂躙せしめる歩みの原理を改め、その大いなる動きを止めよ−
詠唱と共に振りかざす指に沿って
円環に沿って力が蓄積されていき、空気から振動が伝わってくる。
(これが、思い描いていた私たちの夢)
−
レイラの
少しの間だけ静寂が戦場を包む。
《本部、何か横切らなかったか?》
(ふふふ、やっぱりうまくいった)
《空中にミサイルが浮いている。どういうことだ?》
そして、時間が経過して自爆し始めるミサイル。
(そうそう、時を止めるんじゃなくて動きを止める技だからこうなるの!)
《目標は?》
《測距班より入電。目標は健在…。いや、目標は停止。目標停止しています》
そんな無線が遠くから聞こえてきて、レイラはガッツポーズを決めるのだった。
「いける、いけますよ。私たち!」
「よっしゃ、反撃開始だ!」
と、意気込む二人であったが…。
「よし、この隙にまずは服を着ようか!」
バスタオル一枚だけのレイラはひどく赤面したのである。
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