第52話 僕のだから

 今回もキュンキュン回! アーサーがひたすらにかっこいいです!

 どうぞ第52話をお楽しみください! (#^^#)


 ――――




 「アーサー殿下、エレシュキガル様、ご入場!」


 私とアーサー様の名前が響くその会場。

 その天井には星彩を放つ無数のガラス細工がぶら下がったシャンデリア。

 その明かりに照らされる人々は、魅力的なデザインのドレスや礼服を身にまとっていた。


 丸テーブルに用意されている料理たちも今すぐにでも食べだしたくなるぐらい美味しいそう。チキンもあんなにつやつやで輝いてる。

 その隣に並べられたグラスは傷一つなくピッカピカ。


 みんな綺麗で、全てが輝いて見えた。

 夜会経験の少ない私は、その圧倒的なオーラに思わず目を丸くする。


 「どうしたの?」


 立ち止まっていると、顔をのぞかせてきたのはアーサー様。

 会場も十分明るいのだが、彼の顔は美しすぎて眩しい。


 「もしかして、足を痛めた?」

 「いえ、足は大丈夫です。ただ、ちょっと会場の雰囲気に圧倒されまして……」

 「確かに今日は大人数だからね。僕も少しだけドキドキしてるよ」

 「アーサー様もですか?」

 「うん。ほら」


 アーサー様は私の手を取って、自分の胸に当てる。

 触れた瞬間、トクットクッと彼の心音を感じた。


 「今日のパーティーは僕たちのためのもの。だから、エレちゃんは気負わずに肩の力を下ろして、楽しんで」

 「楽しむ………今日はパーティーを楽しむ……」

 「そうそう」


 楽しむという言葉を反復すると、アーサー様はうんうんと頷いてくれて。

 気づけば、肩の力がおり、少しだけリラックスできた。


 「ああ、でも、もし疲れたら、休憩室を用意してるから言ってね。無理は禁止だから」

 「はい。お気遣いいただきありがとうございます」


 そうして、アーサー様の手を借りながら、2人で弧のような階段を下りていく。

 その間ずっと四方八方から視線を感じた。

 アーサー様に注目していると思ったのだが、なぜかみんな私を見ていて、階段を下り終えても、周囲の視線は消えることはなく。


 おそらく、あまり社交界に顔を出さない私が気になるのだろう。


 注目が気になりながらも、私たちは正面の玉座にいらっしゃる陛下と妃殿下の元へ向かう。そして、陛下の前まで行くと、アーサー様に倣って頭を下げた。


 「久しぶりね、エレシュキガル」


 そう声をかけてくれたのは、アーサー様の御母上マリベル妃殿下。

 アーサー様と同じブロンドの髪を持つ妃殿下は、柔らかな笑みも彼に似ていて、親子であることを感じる。


 「改めて、アーサー、エレシュキガル。婚約おめでとう」


 そして、妃殿下とともに笑顔で迎えてくださった陛下。

 アーサー様の同じ水色の瞳を細め、嬉しそうな微笑みを浮かべていた。


 「堅い挨拶は以前したからな。2人とも今日は“フランク”に話そうじゃないか。な、マリベル?」

 「ええ、そうね。エレシュキガルとはあまりお話もできなかったし、今日はゆっくりお話しましょう」


 以前挨拶に伺った時は、陛下に時間があまりになく儀礼的なものだった。

 2人とお話するのは緊張するけれど、アーサー様の小さな頃が気になるし、聞いてみたいな。


 「おめでとう、アーサー、レイルロード嬢」


 そして、陛下の隣に座っていたのは、アーサー様の兄アレクサンダー殿下。

 そして、そして、彼の隣には――――。


 「エレシュキガル、婚約おめでとう」

 「ありがとうございます、ニーア様」


 ずっとずっと私の憧れだった彼女。

 アレクサンダー様の婚約者であり、現役の王家直属騎士。

 長い紫髪の彼女の名前はニーア・ガントレット。


 かつて私と同じように前線で戦っていた元軍人。

 魔力が少なく魔法があまり使えない様は、剣の扱いは一番。

 相手が男性であっても、容赦なく追い詰めてしまう、凄腕剣士。


 剣術が苦手だった私の憧れの人だった。

 

 「それにしても、久しぶりね」

 「はい。3年ぶりでしょうか」

 

 お母様がいた頃は、よく会って話していたのだけれど、軍人になってからは顔を合わせることがなくなっていたのよね。


 「あんなに小さかったのに、こんなに大きくなっちゃって………」


 ニーア様は私の幼少期を思い出しているのか、手で小さい頃の身長を示し、今の私を見比べる。


 「お母様に似て美人さん。ああ、可愛いわ………アーサーのところじゃなくて、私の所に来てほしい」

 「そ、それは……」

 「ダメだよ。ニーア姉さん」


 アーサー様に体を引き寄せられ、ぎゅっと抱きしめられる。

 その抱擁はきつく、顔をうずめているせいで、彼の顔は見えない。


 「エレシュキガルは僕のだから」


 そのあまりにも魅力的な声に、思わず眩暈。

 ゼロ距離でそんなこと、言われたら………私………。


 そんな私たちに目を丸くさせていたニーア様。

 すると、彼女は吹き出すように笑い、つられて隣のアレクサンダー様も笑みをこぼしていた。

 

 「まぁまぁ、本気になっちゃって。もちろん冗談よ、アーサー」

 「そう、それならよかった。ニーア姉さんのことだから、本気でエレシュキガルを奪おうとしていたのかと思った」


 そう話すアーサー様の声のトーンはまだ真剣。

 ニーア様をかなり警戒しているのを感じた。

 一方、ニッコニコの顔を浮かべ楽しそうなニーア様。


 いたずら好きな彼女は、誰よりもこの状況を楽しんでいて、満足な様子。


 「もう、本気にしないでちょうだいな、アーサー。エレシュキガルがあまりにも可愛いかったから、冗談を言ってみただけよ………もう、ほーんと、エレシュキガルのことになると、全部本気に捉えちゃうんだから………」


 アーサー様の抱擁から解放されたものの、私の頭の中はまだてんやわんやで。

 

 『エレシュキガルは僕のだから――』


 その彼の声がずっと頭に響いていて、思い出すたびに頬が熱くなる。


 「………って、あらあら? エレシュキガルも林檎みたいに顔も耳も真っ赤にさせちゃって、可愛い❤」


 ニーア様の指摘を受け、私はとっさに両手で耳を隠す。

 だけど、「その反応もかわい♥」とニーア様から言われ、もう何をしてもかわいいと言われる始末。

 どうしようもできなくなって、半泣きで隣を見ると、アーサー様も「照れるエレちゃんもかわいいな」とこぼしていた。


 「ニーア、ちょっかいをかけたくなる気持ちを分かるが、2人をからかうのはその辺にしておけ」

 「はぁーい」


 ようやくアレクサンダー様が止めに入ってくださったことにより、それ以上ニーア様にからわれることはなく、陛下、妃殿下、兄殿下、ニーア様の挨拶は終了。

 続いて来賓の方々から挨拶を受けることになった。

 アーサー様が妃殿下の横の席に座り、私もその隣の席に腰を掛ける。


 すると、参加者が次々にやってきて、挨拶を受けた。

 何を話せばいいのか分からないので、私はとりあえず来た質問に答え、基本的にはアーサー様が話されていた。


 ただ挨拶を交わすという、それだけのこと。

 訓練よりも勉強よりもずっと簡単なはずなのに、一組終えるごとにどっと疲れがやってきた。


 ちらりと横を見たが、アーサー様に一切の疲れを感じさせない、堂々と立っていた。

 そして、私と目を合わせると、爽やかな笑みを見せてくれた。


 無理はいけないと言われたけれど、でも、挨拶だけは頑張りたい。

 挨拶の途中で休むなんて、アーサー様の婚約者として失格なような気がするし。


 うん! 挨拶が終わったら、休憩をもらおう! そうしよう!


 そう意気込んで迎えた次の人たち。


 「今回はご婚約誠におめでとうございます」


 それは意外な人で、このパーティーには来ないであろうと思っていた人。


 「お久しぶりです、ラストナイト公爵」


 私たちの前に現れたのは、ブリジット様のお父上、ラストナイト公爵。

 ブリジット様とずっと不通になっていたから、てっきり病気で寝込んでいらしたのかと思ったけれど、普通に元気そうで。


 うーん。あえてブリジット様に連絡をしなかったのかしら。

 もし、そうだとしたら、ブリジット様が可哀想。あんなに手紙を送っていたのに、フル無視なんて。


 少しだけムカついてしまったが、その感情はすぐに消え失せ。


 「…………?」


 ラストナイト公爵の隣にいたブリジット様ではない少女に興味が引かれていた。

 うーん。彼女、どこかで見たことがあるような。


 ラストナイト公爵の背中に隠れるようにいた、淡い桃色髪の少女。

 髪色はブリジット様と同じ桃色だが、瞳は似ていない赤色。


 ラストナイト公爵についているってことは、ラストナイト家の子なんだろうけれど………こんな子いたかしら?


 ブリジット様には兄様がいらっしゃるとは聞いたことがある。

 でも、妹がいたなんて聞いたことがない。そんな情報を掴んだことがない。


 「彼女はつい最近養子として迎え入れた娘でございます」


 私たちがじっ―と少女を見ていると、公爵が簡単に説明してくださった。

 ああ、なるほど。養子ね。

 それだったら、ブリジット様に似ていない理由に納得がいくわ。


 そうして、公爵に挨拶を促された少女は「はい!」と少し裏返った声で返事をする。

 一歩前へ進み、震えた手でスカートの裾を掴んで一礼。


 「あ、アーサー殿下、レイルロード様っ! こ、この度はご婚約おめでとうございまぁすっ!」


 それはそれは、彼女の声は大きかった。

 だけど、彼女は気にすることなく、緊張がこっちに伝わってくるぐらい声を震わせながらも、大声で続ける。


 「わ、私、レイン・ラストナイトとお申しまぁすっ! よ、よろしくお願いいたしまぁすっ!」


 周りが静まってしまうほどに爆音の彼女の声は、会場に響いていた。





 ――――





いつもお世話になっております! せんぽーです!


現在更新中の軍人令嬢は8月29日で1周年を迎えます! (*´ω`*ノノ☆パチパチ

いつも途中で筆が折れてしまう私ですが、ここまでこれたのも皆様の応援のおかげです! 

本当にありがとうございます!


エレシュキガルたちの物語はこれからもまだまだ続きます! 

というか、まだ半分もかけていないので、あと1年はかかるかもしれません!(笑)

でも、頑張ります! 最後まで書きます!


どうか最後までお付き合いいただけたらと思います!

これからもよろしくお願いします! <(_ _)>


【お知らせ】

来週も日曜日です。時間は夜になるかと思われます。(曖昧ですみません)

詳細は後日あとがき、もしくはあらすじでお知らせいたします。よろしくお願いいたします。

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