第3話 通り魔はじめました。

トラックでは無理だった。


定番だったのに。


ただの交通事故になってしまった。


何か条件がたらなかったのだろうか。


異世界転生は難しい。


私は考えた。


次は通り魔をしてみよう。


これも聞いたことがある。


通り魔に殺されて異世界に転生される話。


たまたま通り魔に出会う確率は難しい気がする。


だから私が通り魔になることにした。


私が突然おそいかかってその人が異世界に転生されるかを確認する。


良い方法だ。


同級生はたくさんいる。


包丁は100円ショップで買うことにした。


凶器は堂々と捨てたらいい。


洗って新聞紙にくるんでゴミの日に出すのだ。


しっかりと包丁危険ですって書いといてあげればいい。


処理してもらえば証拠はなくなる。


堂々としていたら見つからないものだ。


ようは姿さえ見つからなかったらいい。


私は雨の日を選ぶことにした。


帰りが雨の予報の時を狙った。



---その日


夕方から雨の天気なので朝の登校の時はほとんどの人が長い傘を持っていた。


持っていない人もカバンの中に折り畳みを持っているのだろう。


けど私はもっていかない。


傘に入れてもらえなくなるからだ。


鞄には包丁しか入っていない。


朝、靴箱で同級生に声をかけられる。


「傘持ってこなかったの?」


『うん、急いでたから。雨は夕方からだからギリギリ帰れるかなって。』


「もし雨降っていたら、途中まで傘に入れてあげるね。」


『ありがとう。』


なんで神様はこんなに私に味方してくれるんだろう。


ターゲットは決まった。


この同級生を殺そう。


ーーー授業が終わると


「めちゃくちゃ降ってきたね。」


「絶対雨降ると思ってたよ、近くまでいれてあげるから。」


『ありがとう、まさかこんなに降るなんて。』


両手を合わせる。


相手はごめんなさいに、お願いしますに見えただろう。


けど私は神に感謝して手をあわせたのだ。


いまから殺します。次は異世界転生されますようにと。


帰り道で雨がさらにきつくなってきた。


数メートル先も見えない。


なんでこんなにうまくいくんだろう。


『そこの道は入った場所まででいいよ。』


『ここまでありがとう。』


「こんなとこでいいの?」


不思議に思っている。


それはそうだろう、この道に入ったのは万が一にも誰にも見られないようにだ。


私は鞄から包丁を取り出す。


相手からは折り畳み傘に見えたかもしれない。


雨の中でも包丁がキラリと光った。


同級生は理解できなかっただろう。


自分に何が起きようとして何が起きたのかも。


包丁をのどに突き刺した。


制服の部分ではポケットに何か入っていて、引っかかっても嫌だったからだ。


感触は驚くほどなかった。


包丁の切れ味がいいのか、人の体はこんなものなのかわからなかったが、刺した感触もなくスルスルと喉に包丁が飲み込まれていく。


イキよいよく包丁を戻して返り血を浴びたら雨でも大変だ。


ゆっくりと抜いていく。


同級生の目は濡れていたが涙なのか雨なのかわからなかった。

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