第1章第1話 勇人、ヤトになる

 そのあと、俺は「ヤト」というキャラネームを登録した。この世界でヤトと名乗ることとなった俺は、プレゼントを確認した。入っていた物は。1000ポルカを手に入れた。なぎなたを手に入れた。チェンジアップを習得した。これで所持金は最初からあった100ポルカと合わせて1100ポルカになった。さて、次はどうしようか。こういうゲームでは、まず、防具等の身支度を整える者、さっそく町の外に出る者、ギルドに行くなどして、情報を収集する者など、みんながさまざまな行動をとる。俺は、とりあえず、目についたので、ギルドに行くことにした。

「いらっしゃいませ。ギルドにようこそ。」

ギルドに居たNPCのお姉さんに声を掛けられる。

「ギルドでは、クエストの発注、クエストの受注の他に、仲間プレイヤーの紹介、クラウドファンディングの発注、受注、所持金や、所持品の預かり、この世界でのさまざまな情報の開示等を承っています。要は、リアルでは、ハローワーク、出会い系サイト、銀行、マスコミの役割を一手に引き受けているということです。」

「出会い系サイトって、いかがわしいな」

「はい。あなたにピッタリなプレイヤーを紹介できますよ。女性でも男性でも。なんてね。ただし、残念ながら、ゆずもんオンラインでは、結婚というシステムがないので、実際には結婚できませんが。」

「ちなみに、クラウドファンディングってのは、どんなんだよ」

「クラウドファンディングとは、皆様から集めたお金で、何かを成し遂げて、それを皆さんに還元するというシステムです。ほら、あなたにピッタリなクラウドファンディングを紹介しますね。まずは、これ、エアーコークリの案件。街の間の移動に飛空艇に乗ることもこの世界ではできます。エアーコークリは、飛空艇を運航している会社ですよ。エアーコークリが新型の飛空艇の購入を検討してて、クラウドファンディングで、エアーコークリに出資すれば、新型飛空艇が墜落するなどして使用不可能になるまで、1口につき毎週5ポルカもらえるんですよ。」

「1口っていくらだ」

「はい。1口200ポルカですね。でも、エアーコークリにクラウドファンディングすれば、エアーコークリの飛空艇の運賃10%割引が受けられるんです。」

「他に?」

「他は、これ。オハダ社のビキニアーマー製造工場のクラウドファンディングはいかがですか。完成すれば、1口につき、毎週10ポルカもらえます。そして、エアーコークリの飛空艇のように事故のリスクもありません。加えて、5口以上クラウドファンディングをすれば、ビキニアーマーももらえるんですよ。男性でもビキニアーマーを装備できますし、その点はご安心ください。それに、1口200ポルカ。良心的でしょう。」

「はー。そうですか。ビキニアーマーってそんなに優れた防具なんですか……」

「一見、覆っている面積が少ないから弱いと思われがちですが、防御力がなぜか、通常のビキニアーマーでも、中堅クラスの防具並みにアップするんですよ。」

「じゃあ、ビキニアーマー製造工場の案件を5口クラウドファンディングするぜ」

「かしこまりました。それでは、1000ポルカをお支払い下さい。」

こうして、俺は1000ポルカを払い、ビキニアーマー製造工場の案件のクラウドファンディングを受注した。しかし、俺はこの先、後悔することになる。

 次に、防具屋で、安物の兜を100ポルカで買い、宿屋へ行こうとした。しかし、ここで、もう所持金が尽きたことに気づくのであった。NPCの宿屋の主人にあきれた顔をされ。

「金がないなら、泊まれないな。うちは善意でやっているんじゃないからな。手っ取り早く金を手にするなら、街の外に出て、モンスターを倒して、モンスターが残した魔石を換金するんだな。」

と言われ、宿屋から追い返されたのであった。仕方ない。街の外に出て、モンスターを倒そう。

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