E.G.軍宇宙センター防衛作戦

 ファングの奇襲部隊との戦闘を終えた戦艦フリージアは、E.G.軍宇宙センターに向かった。

 先の戦闘で大きな戦果を上げたフリージア隊は大いに歓迎された。

 敵の主力部隊を殲滅したアーサー。

 敵の母艦を撃沈したアラン。

 E.G.軍宇宙センターでは二人の話題で持ち切りだった。

 特にアーサーの愛機、カリバーンの人気は絶大だった。

 E.G.軍に現れた白銀の英雄。

 劣勢を強いられていたE.G.軍にとって唯一の希望。

 職員の中には、第一次宇宙戦争の英雄、福山少佐の再来と称える者もいた。

 絶大な評価を受けたフリージア隊であったが、宇宙への打ち上げ順序は最後となった。

 打ち上げの順番を変更する事が困難であったからだ。

 順番を変更すれば、他の宇宙戦艦の打ち上げが止まってしまうのだ。

 E.G.軍本部は最大戦力であるフリージア隊を、早く敵の本拠地であるブラック・ダンデライオン攻略作戦に参加させたかった。

 だが、ただでさえ戦力が不足しているのに、更に戦力を減らす選択を出来なかった。

 その為、フリージア隊は全艦隊の打ち上げが完了するまで、E.G.軍宇宙センターで防衛の任務につく事になった。

 戦艦フリージアは打ち上げに必要な準備を行う為、防衛作戦には参加出来ない。

 少しでも打ち上げが早くなるように、ウォルフ技師長が宇宙センター職員に協力してくれている。

 防衛作戦の戦力はフリージア隊のチャリム部隊と、E.G.軍宇宙センターのチャリム部隊だ。

 作戦の指揮を執るのはアーサー・グリント大尉。

  そして、オリヴァー・カーライル中尉とアラン・バークス兵長の小隊が、指揮官のアーサーの補佐するという布陣だ。

 対するファング側は、アジア方面に侵攻していたブラック・ダンデライオン<アカミ>所属の第二艦隊。

 既にインド半島西部からクラスIFのG.D.ウエイブが3機観測されている。

 恐らく戦艦3隻を含む、敵の主力部隊だろう。

 敵のエース機が参加している可能性が高いので、先の戦闘の様に簡単に撃破は出来ないだろう。

 それでも戦う以外の選択肢はない。

 敵戦艦に近づかれたら、砲撃で打ち上げ施設が損傷を受ける可能性がある。

 それ故、グリント大尉は打って出る選択をしたのだった。


「E.G.軍の勇士よ! 我が勝利の道に続け!」


 アーサーが通信で友軍を鼓舞した。

 先頭を飛行するカリバーンの後を、友軍のアルダーン部隊が追いかける。


「どうするよバークス少年? グリント大尉様が行っちまったぞ?」


 カーライル中尉がからかうように言った。

(グリント大尉か……皮肉のつもりか? いつもはアーサーって呼ぶのにな)


「やるしかないだろ? 色々言いたい事はあるが、襲撃を受けたのであれば仕方がない」

「仕方がないで済まない状況だと思うけどね。あの英雄様に俺達必要かな?」

「分からない。でもアーサーの支援はする。来たぞ敵だ!」


 敵戦艦から主力機のリベレーンVEが次々に出撃してきた。

 先陣のアーサー機は既に戦闘を開始している。

 時折発生する敵機の爆発がアーサーの実力を示している。

(圧倒的だ……白銀の機体が舞う度に敵が撃墜されていく……こんなに強かったか?)

 アランはアーサーの実力を目の当たりにして愕然とした。

 福山少佐との戦闘シミュレーションでは、そんなに差を感じていなかった。

 だが、今はアーサーの方が圧倒的に強いと感じている。

 敵を次々に撃破していくアーサー。

 それが友軍にとって仇となっていた。

 アーサーに続いた友軍が次々撃破されていったのだ。

 アーサーは敵戦艦の砲撃の合間を縫って飛行しながら、敵のチャリム部隊と白兵戦を行う事が出来る。

 だが、友軍の一般兵には同じ事は出来ない。

 敵戦艦の砲撃の直撃を受けた者。

 砲撃を避ける事に集中し過ぎて、背後に忍び寄る敵機に気付かなかった者。

 様々な理由で、次々に撃墜されていく……

 それでもアーサーは止まらない。

 友軍が撃破されるより早く敵を単機で撃破するつもりのようだ。

 カリバーンから、ひと際大きな光が放たれたのが見えた後、敵の戦艦一隻が高度を落としていくのが見えた。

 トライ・レジェンズのランスモードの光だ。

(敵戦艦を撃沈した操縦技術は流石だな。だが、友軍の損害が大きすぎる。このままでは戦線を維持出来ないぞ)

 アランはアーサーの戦果より、友軍の損害の大きさに焦りを感じた。


「ヤバいぞ少年! 仮に今回の戦闘に勝利出来ても、次回の襲撃に耐えられなくなるぞ」


 カーライル中尉もアランと同じ考えの様だった。

 その時、青い塗装の機体がカリバーンを襲った。

(あの速度。廉価盤のリベレーンVEではない。親衛隊仕様のリベレーンか! ランスモードのチャージ時間を狙われたか?)

 今カリバーンの動きを封じられたら、友軍が壊滅する可能性が高い。

 その様な事態は阻止しなけらばならない。

 アランとカーライル中尉は、敵のエース機の攻撃を受けているアーサーの援護に向かった。

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