死のブルースクリーン

 激しくぶつかり合うビームソード。

 アーサーのカリバーンと敵エースのリベレーンが白兵戦を繰り広げているが決着がつかない。


「しつこいんだよ君は!」


 敵のエース機を撃墜出来ず、アーサーが苛立つ。

 アーサーが友軍の損害が予想より大きい事に気付いたのだろう。

 機体の動きから焦りを感じる。

 残りの戦艦を撃破しようとしているが、敵のエース機に邪魔をされている。


「落ち着けアーサー! 俺が引き付けるから敵艦を落とせ!」


 カーライル機がエース機の背後に回り込み、ビームマシンガンを乱射した。

 敵のエース機は背を向けたまま攻撃を回避し、カーライル機に向かってビームライフルを向けた。

(まずい! 間に合え!)

 アランはシンセシスー1のシールドをカーライル機の前に投げた。

 エース機が放ったビームは直撃コースだったが、アラン機が投げたシールドがかすり、僅かにビームが逸れた。

 それでも放たれたビームはカーライル機の腕部を吹き飛ばし、本体にも損傷が出ている。


「くそぉぉぉぉぉっ! 格闘戦でっ!」

「撤退して下さいオリヴァーさん! こいつは僕が倒します!」


 腕部ごとビームマシンガンを失ったカーライル機が、残った左腕で格闘戦を挑もうとしたがアーサーが制止した。


「早く撤退しろ。手負いで勝てる相手ではない!」


 アランはけん制射撃をしながらカーライル機の前に出た。


「情けねぇな。先輩の俺が守ってやらなきゃならなかったのに……」

「戦場で生き残るのに先輩も後輩も関係ないですよ!」

「気にするな。俺は情けないとは思わない」

「済まない。必ず帰って来いよ!」


 カーライル機が撤退していく。


「本当はアランに戦って欲しくはない……」

「遠慮するな。俺は弱くはない」

「知っている……だけど!」

「アーサーは俺に死なないって言ったよな。それは俺も同じだ」

「アラン……」

「俺は生きる! みんなを守る為に!」

「分かったよ。アラン、背中は任せた!」

「任されなくても守ってやるよ、アーサー!」


 アーサー機がトライ・レジェンズのアローモードで射撃を行い、敵のエース機の回避ルートを埋める様にアラン機がビームライフルで攻撃する。

  普通の敵であれば確実に撃破出来る攻撃。

 だが、敵のエース機にはかすりもしない。

(未来予測の様に敵の動きを読み切ったアーサーの攻撃が通用しない。しかも俺が援護しても攻撃が当たらない……何者だ?)


「腑抜けと聞いていたが粘るじゃねぇか銀色!」


 敵のエース機から通信が入った。


「何故当たらない! 動きを読んでいるのに!」

「動きを読んでも意味はねぇ。操作は繊細・精密・計画的に。基本に忠実で無駄のない動作に隙は無いんだよ!」

「そんな事で!」

「そんな事の積み重ねが勝利を呼び込むんだよ。それがレイモンド・バージェス様の勝利の法則だ!」

「無駄口で勝てると思うな!」


 敵のエース、レイモンド・バージェスと口論し冷静さを欠くアーサー。

 だが、冷静に戦場を観察しているアランは、友軍の様子がおかしい事に気付いた。

 友軍の通信で『ブルースクリーン』という単語が飛び交っており、アーサーにつられて勇ましく進撃していた友軍部隊が後退を始めている。


「ブルースクリーン?」


 アランは思わず呟いた。


「知ってるじゃねぇか。有名人の俺様の事を」

「知らない。お前とブルースクリーンに何の関係がある?」

「今際の際に映るんだよ。モニター全面に俺様の青い機体がね。死のブルースクリーンの完成ってやつだ!」


 アランはモニター全面に青い機体が映るという情報から、メインカメラが敵機を全面に映し出す距離……接近戦が得意だと推測した。


「アーサー気をつけろ! こいつは格闘戦の方が得意だ!」

「良く分かったな! 賢いじゃねぇか坊や!」


 ライルがアランの考えを肯定する。

 得意な戦法を言い当てられても動揺が無い。

 それどころか声から喜びを感じる。

(戦いを喜んでいる? 戦闘狂か?)

 アランとアーサーは交互に射撃を行い、レイモンド機の接近を阻止する。

 完全な膠着状態……それはアラン達だけを見た場合だ。

 前線は後退しており、このままでは敵戦艦の接近を許してしまう。

 E.G.軍宇宙センターへの攻撃は何としてでも阻止しなければならない。


「アーサー! そろそろ行けるか?」

「大丈夫だアラン! 行くぞ!!」


 カリバーンが敵戦艦目掛けて最大速度で飛行した。


「残念! さようならだ!」


 レイモンド機がカリバーンに向かってビームを放った。

 カリバーンの背後を正確に狙った必殺の一撃。

 だがーー


「正確過ぎるんだよ、アンタは!」


 射線を読予測していたアランがビームソードでビームを打ち払った。


「貫け! トライ・レジェンズ!」


 アーサーのカリバーンが、リチャージが完了したランスモードで敵戦艦のブリッジを貫いた。


「くそったれがぁ! お前だけでも死んどけや!!」


 レイモンド機がシンセシスー1に接近してきたので、アランはビームライフルを投げた。


「そんなんで防げると思うな」


 攻撃を受けたビームライフルが爆発を起こし視界を塞ぐ。

 アランはビームソードで斬りかかったが、レイモンド機にビームソードで弾かれた。

 だが、アランの攻撃はこれで終わりではない。

 ビームライフルの爆発の死角から、もう一本のビームソードを突き出した。

(接近戦が得意なのはお前だけではないっ!)

 突き出したビームソードがレイモンド機の脇を抉った。


「二刀流だと! 損傷が大きいか……撤退だ!」


 レイモンド機が撤退すると同時に、最後の1隻の敵戦艦も撤退を始めた。

(手ごわい相手だった。シンセシスー1の格闘プログラムを改良していなかったら敗北していたな)

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