密林の少年6

 木々に囲まれた空き地にいては身動きが取れない。

 自由に動ける空中戦をする為、カーライル中尉のアルダーン・カスタムが飛び立った。

 アランもカーライル中尉に続いてシンセシスー1を飛翔させた。

 敵はG.D.ウェイブの観測通り4機。

 外観からファングの量産機であるリベレーンVEである事が分かった。

 カーライル機がビームマシンガンで先制攻撃する同時に、アランが敵機の回避ルートを予測してビームライフルで攻撃した。

 ビームマシンガンを避けた敵の内の一機が、アランの放ったビームに当たり、ビームライフルを持つ右腕部が吹き飛んだ。

 攻撃を受けた敵機が後退を始める。

 アランの攻撃で遠距離攻撃の手段を失ったから戦力外だと判断したのだろう。

(ファングは殲滅したい。だが、追撃する余裕はないな)

 初撃で敵機に打撃を与えて3対3の状況に持ち込んだが、ノイの機体はウォルフ技師長を乗せているので自由に動けない。

 ここで、逃げる敵機を追って味方が落とされたら意味が無い。

 だからアランは追撃をしなかった。

 カーライル中尉も同じ考えの様だ。

 逃げる敵機を気にせず残りの3機へ攻撃を続けている。

 カーライル中尉が搭乗しているアルダーン・カスタムのビームマシンガンは威力が低いが、ビーム兵器の中では連射能力に優れている。

 けん制射撃に向いているから、敵に回避を強いる事で反撃するチャンスを減らす事が出来る。

 だから、カーライル中尉とアランの2機だけで敵のリベレーンVE3機を抑え込む事が可能となっている。

 その様な状況であるから、戦闘空域の後方で様子を伺っていたノイにチャンスが出来る。

 ノイが撃ったビームが敵機を貫いたのだ。


「やったよアニキ!」


 アランはすかさずスラスターを全開にして、敵機の爆発で出来た死角を突いて敵機に肉薄する。

 残されたもう一機の敵が、アランの攻撃を受けている味方を援護しようとするが、カーライル機が邪魔をする。


「一対一ならお兄さんの方が上なのよね」


 カーライル機のビームマシンガンが敵機の装甲に無数の穴を開けた。

 蜂の巣の様に打ち抜かれた敵機が墜落していった。

 アランも最後の敵機をビームソードで斬り裂き、空中で爆散させた。

 敵機を撃退したので、再び空き地に戻り機体から降りた。


「やったなノイ。ノイが敵を撃墜したから有利に戦えた」

「ありがとアニキ。自由に動かせる様になったから簡単だったっすよ。アニキの師匠は凄いっすね」

「そうだろ、このウォルフの腕にかかれば、ボロボロの中古機体でも最新の機体に大変身だ!」

「楽しそうで何よりだよ。俺には機体を乱暴に扱うな、修理金額を考えろって怒鳴るのにな」

「カーライルは中尉だから運用コストを考えろ! いい年こいて子供扱いされたいのか?」

「へいへい、俺は中尉様だから頭を使うようにしますよウォルフ大佐様」


 アランやノイには甘いウォルフ技師長だが、カーライル中尉には厳しい。

 ある意味中尉として認められているのだろうが、元々気楽な性格のカーライル中尉にとってはきつい様だ。

 後はノイの妹を戦艦フリージアに連れ出し、治療を受けさせるだけと思ったが、その前にやるべき事が出来た。

 空き地に一人の中年男性が駆け込んできたのだ。


「何て事をしてくれたんだ貴様らは!」


 ノイの村の村長が怒鳴った。


「ファングの部隊を撃退しただけですよ。我々はE.G.軍ですから」


 カーライル中尉が所属を明らかにした。


「E.G.軍だと……何でE.G.軍がここに居るんだ。ノイ、まさかお前も戦ったのではないだろうな?」

「すまないっす村長……」

「とんだ疫病神だ! 拾ってやった恩を忘れて村を滅ぼす気か!」


 村長に怒鳴られてノイが委縮する。


「村を滅ぼすって言うけどさ。ファングの残党と取引している時点で不法行為確定なんだぜ。村長って立場なら知ってるよな、アースガバメントの法律。ノイ君を脅してる場合か?」


 カーライル中尉が脅す様に言う。

 中尉が言う事は事実である。

 敵対するファングとの取引は重罪なのだ。

 取引がE.G.に発覚した時点で村は終わりだ。


「アースガバメントがなんだと言うのだ。地球環境の為だと言って我らの生活を奪ったのはE.G.だ! そんな奴らの言う事を聞く必要などない!」

「それで侵略軍であるファングと取引したのか? 強欲だな」

「強欲ではない! 私は村の生活を守りたかったのだ! 不法取引に利益など無い!!」

「それが他の人々の生活を脅かす事であってもか?」

「当然だ! 村の皆は私の家族だ! だが、虐げてきた他の奴らの事など知った事ではない!」


 ファングの残党との取引を隠そうとしない村長。

 アランは地球に住んでいながらファングを支援する村長に怒りを感じた。

 でも、今は怒りを抑える必要がある。

 一刻も早くノイの妹のスーを治療したかったからだ。


「事情説明はどうでもいい。ノイ達は連れて行く」


 アランはノイ達を連れて行く事を一方的に宣言した。


「村長……俺……アニキ達と行っていいっすか?」


 ノイが遠慮がちにアランについて行く事を伝えた。


「ノイ、お前も村の一員、俺達の家族だ。自分で決めたなら好きにしろ!」


 村長はそう言って村に戻っていったーー

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