前編:Grayish future
序~Grayish future~
IC16年5月。
突如、地球政府<アースガバメント>を設立すると各国の指導者が共同声明を発した。
地球上のあらゆる人々が統一政府樹立に湧く中、怒りを露わにした勢力があった。
宇宙で生活している人々だ。
それは当然の事と言える。
設立されるのは<地球政府>、そこに宇宙は含まれてはいなかったからだ。
宇宙に住む人類の存在を無視した地球政府の設立に疑問の声を上げる者達もいた。
だが、地球上の国家群による圧力により、地球政府の樹立は強行されたのであった。
同年7月。
宇宙に浮かぶ人類の居住地<ブラック・ダンデライオン>、カーボンファイバーの黒い外装と、緊急時に居住区を分離する構造が、綿毛を飛ばすタンポポににている事から名付けられた人工の大地にて集会が開かれた。
そして、宇宙に4機ある<ブラック・ダンデライオン>の各自治区の代表は、地球政府に対抗する為の連盟<ブーケ・オブ・ダンデライオン>を結成した。
同時に私設軍隊ファングを設立し、地球政府E.G.へ戦線布告した。
地球政府樹立から僅か2か月で地球侵攻が可能な軍備が整う――その不自然さに気付く間もなく戦争は始まった。
第一次宇宙戦争、後に”灰かぶりの夏”と呼ばれる戦争が勃発したのであった――
*
少年はただ眺めていた。
危ないから物陰に隠れていなさい……それが両親の最後の望みだったから。
「2日分の食料しか手に入らなかったな」
男がぼやきながら、両親だったモノを蹴とばした。
男にとっては2日分の食料を奪った程度の意識しかなかった……だが、少年にとっては人生の全てが奪われたに等しかった。
怒りに突き動かされ、少年は初めて両親の言いつけを破り、男の前に飛び出した。
そして、手元から銃声が鳴り響いたと同時に、少年は激痛でよろけた。
反動で銃を眉間にぶつけたからだ。
激痛の中、必死に目を開け、反撃に備える。
だが、目に入ったのは血を流し倒れている男だった。
あっけない最後。
身を守る為と渡された拳銃。
早くあの男を撃ち殺していれば、両親は死なずにすんだ。
少年は願った……理不尽な奴らを殺戮する圧倒的な力を。
少年は誓った……二度と大切なものを手にしないと。
やられる前にやればいい。
どうせ失うなら大切なものは要らない。
それが9才の少年、アラン・バークスが理解した事であり、Innovation Centuryと呼ばれた革新の世紀の冷たい現実であった――
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