第2話 ゴーストヤンキーは夢を見るか
「コラー! 待ちなさーい! 死者の霊界移住拒否は霊法の第232条霊界移住法に違反します! 重大なペナルティが課せられますよ! 今なら間に合いますから大人しくしなさーい」
「すまないが俺はもう止まれないのだ! 俺はこの死の運命から逃れて見せる!」
「なんという足の速さ……! 死はもう確定してるんですよ! 諦めなさーい!」
芦早とアズラはそんなやり取りを交わしながら街中を走り回っている。通行人とすれ違うが死者と死神の存在に気が付くことはなく、ただ風を感じるだけだった。
芦早が曲がり角を曲がるとそこには芦早がよく利用していてコンビニがある。そして、そのコンビニの駐車場には現在はもう絶滅したかと思われていたリーゼントに特攻服を着た見るからにヤンキーですと言わんばかりの恰好をした若者が3人でたむろしている。
そんなヤンキーたちは芦早と目が合うとおもむろに立ち上がり、芦早の行く手を阻むように立ち塞がって来るのだった。
「な、なんだお前ら! 俺が見えているのか?」
「当たり前だろおっさん。 俺たちも死んでるんだからよぉ~」
このヤンキー3人組は芦早が死亡する丁度一週間前に同じようにこのコンビニの駐車場でたむろしていたところ、車が突っ込んできて死亡していた。本来は芦早のように早急に手続きを行わなければならないのだが彼らは未成年だということもあり、ある程度は死神たちの方が手続きを代行するので一定期間は現世で自由が許されている。
「わけわかんねー車にぶっ殺されて俺たちイライラしてんのよ。誰かぶっ飛ばしてやろうかと思っても生きてるやつには手が出せなくてよー……丁度いい時におっさんが通りかかってくれて助かったぜぇ? 同じ死人なら思いっきりボコボコにできんだろ!」
そう言うとヤンキーたちは有無も言わせず芦早に襲い掛かって来た。その時、芦早を追いかけて来ていたアズラが彼らの下に辿り着く。
「追いついたわ! 大人しく観念してお縄に……」
「丁度よかった! この3人をどうにかするのを手伝ってくれ!」
「は、はい?」
「非行少年(故人)を更生させるのも死神の役目だろう!」
「なにグダグダ言ってんだ! オラァ!」
「うわっ! うわわわわっ!」
「おいおい! キミは死神なんだろ! もっとしっかりしてくれよ!」
「そ、そんなこと言われたって私……死神に着任してからこれが初勤務なんだもの……!」
「な、なにぃ! あんなに偉そうだったのに新人だったのか!」
「ゴチャゴチャうるせぇ!」
一番立派なリーゼントのヤンキーとグラサンヤンキーが息の合った連携で襲い掛かってくる。それを芦早がなんとか
「チッ……おっさんヤルじゃねぇか……」
「まさおの殺人パンチを避けきる奴がいるなんてな……世の中は広いぜ……」
「はは、キミたちも十分手強かったさ。とくにその息の合った連携、よほど仲がいいんだな」
「そりゃ、いつだって俺たち3人でつるんでたしな……」
「ああ、また3人で馬鹿やりたかったなぁ……」
どことなくしんみりとしたヤンキー3人組に芦早はいい笑顔を見せる。その一方でボロボロになったアズラは地面に転がっていた。
「やり直せばいいじゃないか。霊界に行っていつか転生してまた3人一緒になればいいのさ」
「だけどよ……」
立派なリーゼントのヤンキーまさおが
「やり直そうぜまさお……」
「そうだぜ、お前との青春の味……思い出しちまったよ」
「まさし……まさと……」
ヤンキー3人組がお互いの顔を見回している、どこか瞳が
「キミたちならできるさ」
「おっさん……ありがとうな!」
「礼には及ばんさ。後の事はそこの死神に頼むといい」
「おう! 分かったぜ!」
そう言って、ヤンキー3人組は転がっているアズラの下へと駆け寄った。そこでようやくアズラは地面から体を起こしてキョトンとした表情を浮かべている。
「死神のねえちゃん! 俺たち、早く転生してんだ! 霊界に連れてってくれよ!」
「え? え? 一体なにが……」
「若者たちがやる気満々なんだ。しっかりサポートしてやってくれよ死神。ではさらばだ!」
アズラがヤンキー3人組に囲まれてる間に芦早は再び走り去ってしまった。今の状況を理解したアズラはその体をわなわなと震わせる。
「こ、コラー! 逃げるなー! ちくしょー!」
アズラの声が
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