第8話 勅命
翌日、フィンジアス国王レスタルガは魔術師フェイムに勅命を与えた。
「フェイムよ、レムド国に対抗する為、早急に大森林の魔獣どもをテイムする手段を獲得せよ。
事態の緊急性を鑑みて、期限は明日より一週間とし、期限内に成果を挙げられなかった場合、お前は死罪となる」
「御意」
フェイムは更に畏まって頭を下げる。
「我が国一位の魔術師であるお前が大森林の魔獣をテイム出来なければ、他の誰にも無理であろう。
既に数千年間研究され尽くしてているのだからな。
然るに、いずれ我が国はレムドのやつらに蹂躙される。おそらく私も生きてはおるまい」
「委細承知致しました。
私が必ずや成功させてみせます」
フェイムは立ち上がり、一礼して王の執務室を後にした。
さて、今回の勅命であるが、一週間の期限を設けたのは他ならぬフェイム自身であった。
王とフェイムは青年期に同じ魔術学園で席を同じくした盟友であった。
当時からフェイムは千年に一度の天才と謳われていた。
しかし、当時のレスタルガ王子はフェイムの天才的な魔術力を教師達を驚かす悪戯のためだけに注力させたのだった。
そう、二人はかなりヤンチャな青春時代を過ごしていたのだ。
フェイムは予め王に書簡を送り、テイム研究の件と期限一週間で死罪について、くれぐれも頼むと願い出ていた。
王は友人として、そんな馬鹿な勅命など出せぬと怒りすら覚えたのだが、フェイムなりに何かしらの計画や意図があるかもしれぬと思い直した。
『いざとなれば、王命にて死刑執行を無期限延期とすれば良かろう。フェイムの真意はわからぬが、友人であればこそ彼の行いを見届けるとしよう』
執務室の机の上には、フェイムの書簡が置かれていた。
『出来なければ死罪と、きつく厳命下さい。これは、絶対に必要なことなのです』
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