第6話 偵察
クリス・ファイブは騎乗するワイバーンを一気に上昇させ、『視力強化』魔法を発動させた。
『視力強化』は初心者向けの初等魔法と言われている。
しかし彼女は、遺伝的に高濃度魔素を蓄えた眼球を持っている。
結果、彼女は平凡な初等魔法を国宝級へと昇華させるのだ。
ファイブ一族は代々『レイヴスの眼』として活躍する名門中の名門なのである。
「極大望遠と魔素濃度分布を同時展開しました。
結果報告します。半径300キロ圏内にレムド軍ワイバーンは一騎も居りません。
あ、21時400キロ地点、上空にワイバーンの大群を補足しました。
大森林の深部に向けて移動中と思われます」
「レムドは撤退したか。
それにしても国に帰還せず、行く先が大森林とは不可解だな」
「ワイバーンの群れですが、レムド国の兵士が騎乗していません。
ワイバーンに落とされたのか、自ら降りたのか不明ですが…、
発見しました。
レムド兵士は50キロ先を徒歩で撤退中。およそ1500名規模と思われます」
「一体どういう事だ?
レムドの竜騎士はワイバーンに逃げられたという事か?
あまりに間抜けすぎて、何かの罠のようにも思える。
…ともあれ、レムド撤退という状況であれば、レンガ隊も全滅を免れたやもしれぬ。
このまま渓谷に沿って北上し、レンガ隊の救援に向かおう。
ただし、エイミは直ちに帰還してレムド撤退を王に報告しろ」
「了解」
エイミ副隊長騎乗のワイバーンが急速反転し、偵察隊を離脱していく。
「ファイブ、見たところレンガ隊はどうなんだ?
もちろん、生き延びていて欲しいと願っているが」
クリス・ファイブは小さく首を振って答えた。
「この先40キロの地点で回廊が埋められています。
魔素濃度測定による生体反応測定は非常に微弱。
レンガ隊は全滅の可能性があります。
とはいえ、地下空間に偶然隔離されていれば生き延びている可能性はあります。
地表に見える死体の数は僅かですから…」
「わかった、埋め殺されている可能性が高いのだな」
アズランドは静かな怒りに手綱を強め、レッドドラゴンは隊を鼓舞するように咆哮を上げる。
それから偵察隊は、一直線にレンガ隊消失点へと向かった。
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