ライル
身体が軽い。絶好調のさらに上の段階にいる気がする。
魂魄暴走。これが保有した魂と一体化した状態か。
クソ重い斧槍も片手でぶん回せる。ただの回し蹴りが大槌でぶっ叩いたかのように骸骨を粉々にする。いつも以上に好き勝手に身体を動かしまくっても息切れしない。
「これで上の奴らが目に入らなきゃ最強の力を手に入れたぞって調子に乗れるってもんだがなぁ」
呆れてものも言えないとはこのことだ。
ぶっちゃけ。上の連中が何をやってるのかすらよく分からん。
まず速い。ノアもジェノも高速で空中をあちこち移動するから目で追おうとすると酔いそうになる。その上で攻撃も速すぎだった。というか初動が見えない。
2人が衝突したと思ったら大きな金属音と雷のような閃光が走って、次の瞬間にはお互いの間合いから外れた場所にいる。ノアは反転ついでに虚空に向かって長剣を振るい、騎士の誉れの特性か、或いは魔法の類か、円弧を描いた闇色の魔力体がジェノに向かってかっ飛んでいった。西方の魔剣士が使うという
間合いの外から詠唱もなく剣の一振りでそんな遠距離攻撃をされたら魔術師の立場がない。というかリーチの長さを特徴とする斧槍の立場もない。
あんなの反則だろ。卑怯だ、卑怯。剣士なら正々堂々近距離で戦え。と言いたくなるような一撃を、しかしジェノはジェノで軽々と終の願いで弾き飛ばしてしまう。
進路を強制的に変更された魔力体は神殿と正反対の方の地面へと向かい、轟音と共に砂煙を発生させ、それが収束すると、20匹はいたはずの骸骨が消滅していて、代わりにクレーターのようなものができている。
「おいおい。あれがこっちに来たら一瞬で全滅じゃねえか」
力の差が酷すぎて逆に笑えてくる。あれで中位呪体化? ふざけている。こちとら禁忌の魂魄暴走を使っても足手まといにすらなれそうにない。空気だ、空気。
罪深き鷹に翼がなくて本当に良かった。空を飛べたらアレに参戦しなきゃいかんかっただろうし、命がいくつあっても、それこそ不死であっても死ぬ気がする。
イグノで一度は死んだようなものだし、今さら命を惜しむことはないものの、どうせ命を懸けるのなら、あの命の恩人の正気を戻すのに投じたい。実際問題、自分の力でそれを為せるかと言えば、魂を百回捧げたところで不可能でしかないのだが。
今も上空で金属の衝突音が響きまくっているが、秒間に何回の攻防をしているのやら、鷹の目を以てしても確信を持てない。奴らからしたら地上の連中は蟻のようなものだろうし、雑魚は黙って雑魚どもの相手をするべきなのだろう。
ノアも裂空斬がこっちに飛ばないように射角を考えて撃っていると思うし、ここは勇者様と聖女様の活躍を信じて武芸を披露するとしよう。
「頼むぜ、リン」
直後にノアが裂空斬を8連射。そこかしこに暴力の雨が降った。
おいおい。本当に頼むぜ、勇者様。作戦の要に当たったらどうすんだよ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます