解放
ノアはリンの声を聞いた瞬間に手の力が抜けたような感覚に陥った。
理由は分からない。
愛する義兄が優しげな笑みを浮かべたからかもしれない。
「……予想外だったな。もっとトロいと思っていたが、やはり頭は回るらしい」
トン、とジェノがノアの身体を押した。
ノアは呪いにでも掛かったような気分だった。
不可解なことに、抵抗の意思が微塵も働かなかった。
「兄弟喧嘩に巻き込んで悪かったな」
腹部に長剣を宿した義兄は、申し訳なさそうに呟いた。
「しかし約束は守る。付き合わせた代償だ」
ノアの脳裏に悪夢の断片が過ぎった。
倒れる父親。
その直前に放たれた呪詛。
「人の欲に翻弄されし不運なる熾天使の娘よ。私達の分まで姉妹仲良くするのだぞ」
「っ! 待ってくれ!」
ノアは手を伸ばした。届かないと分かりながらも。止まらないと分かりながらも。
「
目の前で真っ赤な花が咲き誇った。
リンが泣き叫びながら地を跳ねていく。
だがノアは、呆然と見つめることしかできなかった。
天使の翼を失い、真っ逆さまになって落ちていく大切な人の姿を。
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