仕事

僕も毎日は変わらずに訪れる。

朝はレイヴン卿に小言混じりに仕事を依頼され、昼からは魔物や人間を殺す。

ここ最近は魔物以外にもレイヴン卿の邪魔になる貴族や政治家、革命家さらには宗教家なんかも暗殺することが増えてきた。

帰ってきたら報告の後にフランの肉体改造あそびに付き合わされる。

休む事も遊ぶこともなく、ただ殺して改造される。

普通の人間ならどうにかなってると思うけど、そもそも普通の人間がどういう生活かなんて忘れてしまったけどね。

そんなことを思いながら僕はレイヴン卿のいるドアを叩く―――。



「今回は暗殺をしてもらう。まぁ、貴様には殺す以外のことなどできんがな。」


レイヴン卿はそう言うと写真と書類を机の上に投げた。


「ターゲットはストレイン伯爵。こいつの暗殺の後にこいつの抱えている傭兵団を殲滅してくるのが今回の仕事だ。」


話は終わりだとばかりにくるりと反対を向き、腕を組む。

これ以上は書類を読めってことだろう。

まぁ読んだところで大したことは書いてないけど。


「かしこまりました。期限等はありますでしょうか?」


書類を読めばわかると言われると思うけど一応聞く。


「書類を読め。その程度のこともできんのか。ささっと行け。」


やっぱり。

もう慣れたから別にいいけど。

失礼しますと一言言ってから部屋を出て自室に戻る。

書類には凄く簡単なストレイン伯爵ターゲットのプロフィールに傭兵団のこと、そして期限は1週間とだけ書いてあった。

どこにいるのかとか、今後の予定とか傭兵団の人数とかそういう役に立つものはほぼ無かった。

ほんと、自分勝手だよね。


正直なところ今回の仕事は厳しい。

暗殺だけならいいけど、その後に傭兵団を殲滅しろとか無理ありすぎる。

ロードで殺せなかったから、無理矢理にでも僕を殺そうとしてるらしい。

暗殺した後に殲滅しろってのがいい証拠だ。

僕一人で伯爵お抱えの傭兵団なんて相手するのはロードより厳しいかもしれない。

とりあえず情報を集めてみるしかないかなぁ。


―――――――――――――――――――――――


とりあえず2日で集められるだけ情報を集めてみた。

伯爵領の宿屋の中で僕は情報を整理する。

伯爵は最近領地内に武力を抱え込んでいるみたい。

その力で持って軍にも口出ししたり、最近は周辺貴族を抱え込み侯爵家にすら匹敵するほどの影響力を持っている。

その中核である私兵は強力だ。

その中でも傭兵団がやばい。

流星団。

その実力はB級魔物3体を同時に相手しても完封するほどの実力らしい。

人数は60人強。

元々は元冒険者や元騎士なんかが集まったならず者集団だったけど、その圧倒的武力を持って伯爵に取り入り、伯爵領内で幅をきかせられるほどになっている。

そんな連中を僕一人で相手取るのは厳しすぎる。

でもやらなくちゃいけないんだけどね。

僕が死んだらあいつがどうなるかわからないし。


まぁまずは伯爵の暗殺が優先。

伯爵邸は町の北部にある豪邸だ。

警備は多いけど、傭兵団に役割を取られてやさぐれた連中ばっかりだから侵入は簡単だった。

不認知の魔術を使って侵入し、一指しで殺す。

殺したは後は遺体を隠し、時間を稼ぎながら傭兵団を一人ずつ確実に処理して行く。

後はタイミングと逃走経路の確保、それと傭兵団の狙い順の選定。

理想的な形に持って行くために僕はもう何百回としたシュミレーションをまた繰り返す―――。


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