改造

僕はその部屋についた。

コンコンッ。

僕は一応ノックをする。

やはり返事はない。

僕は何故か禍々しいオーラを放つ扉を開け部屋の中に入る。

薄暗い部屋の中には強烈な薬の匂いに混じり、かすかに血の匂いがする。

壁は生物サンプルで埋め尽くされ、床は様々な本で足の踏み場もない。


「いらっしゃい。私の可愛い瑞輝サンプルくん。」


部屋の主が僕を呼ぶ。

フラン・シュタール。

中央庁所属の生物科学者マッドサイエンティスト

彼女は学院時代に史上初のキメラの製造に成功した功績で、中央庁に引き抜かれた稀代の天才だ。

今は最強の人間を作ることを目的に日々研究しているらしい。


何故僕がそんな人のところにいるのか。

簡単にいえば僕が彼女の実験サンプルだからだ。

僕がレイブン卿と契約した中には、魔獣と戦うこと以外にもいくつかある。

そのひとつが、彼女の実験台になること。

僕はここに来た時から彼女に体をいじくり回されている。

まずは僕の回復力の強化。

通常ロードにぐちゃぐちゃにされたら3日程度で酷い腫れまで回復するなんてありえない。

僕は彼女の実験により、異常とも呼べるほどの回復力を手に入れた。

そして僕は寝ることも休むことも必要なく、常に働かされているって訳だ。

まぁ、さすがにロードにやられた時は回復の限界を超えたみたいで丸一日も寝てしまったけれど、今思えばいつでも起きているから時間が飛ぶ感覚が久しぶりすぎたのかもしれない。


次に身体能力の向上。

これは上手くいっていないみたいで、どこかを強化するとほかの部分が脆弱になるらしい。

そのため僕の身体能力はほぼ上がっていない。

寧ろ改造によって通常の手段では向上は難しくなったくらいだ。

レイブン卿にとっては都合いいんだろうけど...。

最後に思考力と魔法適性の向上。

並列思考やエネルギーの操作能力向上などの効果はあったけど、魔法適性については元々の適正を下げることはできても、上げることはできなかったみたい。

僕の中には複数のエネルギーがあるみたいで、それぞれが邪魔して適性をいじれないそうだ。

複数のエネルギーを持つなんて聞いたことないけど、そういうのだからそうなのだろう。


僕はまた彼女の実験台として狂気の改造を受ける。

僕は色んな器具がついた椅子に座らされ、手足を拘束される。

頭にはヘルメットのような器具を被せられ、これから来る絶望を待つ。


「じゃあ始めるわね。今回は回復力の強化に加えてエネルギーの変質にも挑戦してみようかしら!変質させられれば魔法適性もいじれるかもしれないしね!」


彼女は実に楽しそうに狂った実験を行う。

人を玩具サンプルとしか思っていないからこそ、彼女は天才なのだ。

全ての生物は彼女にとって研究材料で玩具サンプル

そのうち自分で人工の生命体でも作れるんじゃないかとすら思う。

僕はくだらないことを思いながら彼女の実験あそびに身を任せる――。

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