強敵との闘い

「一刀龍水斬術-飛沫-!!」


俺はまずは群がる雑魚ゴブリンを蹴散らすために剣を振るう。

雑魚共は叫びながらまるで飛沫のように飛んで行った。


「ぐぉぉぉお!」


またロードが剣を振り上げる。

自分の部下をやられて怒っているようだ。

そもそも自分で殺し始めた癖に何怒っているんだと俺はこぼすが、そんな皮肉に意味は無い。

まずはロードの体勢を崩す。


「一刀龍水斬術-昇り龍-」


剣を下から上へ逆袈裟の形で振り上げる。

さっきの一撃で俺に反撃されないと思っていたのかロードが驚き、少し後退する。


「連技-滝龍-」


昇り龍によって振り上げた剣を今度は振り下ろす。

ロードの肩から切り裂くつもりだったが、少し皮膚を削っただけだった。


「ちっ、案外弱いなこの体。」


ロードが固いのももちろんあるが、それ以上に俺の力が無い。

ダメージを受けたことでロードが更に激高する。

雄叫びを上げながら剣を振り上げ俺に迫る。

まともに喰らえば先程の二の前になることはわかっているので、無理に受け流すことはせずに避ける。

攻撃の後にできる数瞬の隙を狙って切りつける。


「ちまちま削るしかないか。」


何度も何度も攻撃を避けては切りつけるを繰り返す。

ロードには俺の攻撃は大したことないだろうが、何度も何度も繰り返せばダメージは蓄積される。

何十回同じことをしたかわからなくなった頃、ロードも怒りが最高潮に達したのだろう。

吼えた。

大地を揺るがすかのように吼えた。

一瞬ロードの姿が消えたように見えた。

正確には消えたのではなく、俺が視界を塞がれた。

ロードのスキル「不可視咆哮」対象の視覚を一時的に塞ぐ能力。

まずい、これは避けられない。

俺はギリギリのところで自分の剣を割り込ませ攻撃を流した。

だが、さっきと同じで弾け飛ぶ。


「くっそ、いってぇぇ!」


痛みに耐えきれずに叫ぶ。

だけど俺は痛みに耐えながら剣を再び構える。

ここでは死ねない。

まだ、まだだと。


「水は流れ方で姿を変える。静謐なる流れ、そして全てを飲み込むような激流。それらはまるで人の心のように激しくうねる。」


いつか聴いた師匠の言葉を思い出す。


「どちらか片方じゃ意味がない。お互いが共にあるからこそ水は水として人は人として存在できる。忘れるなよ。」


なるほど、忘れてたよ師匠。

怒りだけじゃダメなんだな、殺意だけじゃどうにもならないんだな。だから俺がいるわけだ。

理を理解した。

俺は構えた剣を鞘にしまいそのまま構える。

居合の構えってやつだ。

まだ、まだだ。

もっと待て、心を澄ませ。

相手の命の雫の音を聞き分けろ。


ロードが迫る。

己を傷つけた剣士に向かって。

振り上げた剣を憎き剣士に向けて振り下ろす。

殺意を込めて、怒りを込めて――。


「それじゃダメだぜ。そいつじゃ俺を殺せない。」


刹那、雫の跳ねる音がした。


「一刀龍水斬術・居合-雫-」


俺は剣を振るう。

殺意を込めて、そして敬意を込めて――。






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