第1部〜こんな僕でもできること〜
強敵
僕はゴブリンの群れと対峙していた。
殺伐とした空気にむせそうになる。
ゴブリンは確かに弱い魔物だ。
二足歩行の小さな鬼のような見た目をしてる。
繁殖力が異常に高く、無限に湧いてくる。
1匹なら村の子供でも追い払えるような弱い魔物だが、数が増えれば話は変わってくる。
眼前には粗末ながらも武器を持ってる30匹程度のゴブリン。
ここまで来るともう普通の冒険者でも討伐するのは難しいだろう。
「なんで僕がやらなくちゃ行けないのさ」
思わずそうこぼす。
そもそも僕は支援魔術師なのになんで前線に立たなくてはならないのか。
答えは簡単。
中央庁、まぁ僕の上司が命令してきたからなんだけど。
そんなことを思いながら刀を抜く。
ずっしりと重い感覚。
これからは命のやり取りなのだと実感する。
「じゃあ行くよ。
その声と共に僕は駆け出した。
ゴブリンも僕に向かって駆け出して来て、手に持つ凶刃を振りかぶる。
僕はそれを剣で流し、勢いのまま逆袈裟に斬りあげる。
「まず1!」
1匹倒しただけで止まりはしない。
次々に迫り来るゴブリンを僕は流し、切り裂き、踏みつける。
10匹ほど倒したところで違和感を感じる。
通常ゴブリンは群れをなして攻撃してくるが、連携は取れているとは言い難い。
けれど、今戦っているゴブリンはそれぞれが攻撃の後にできる隙をカバーするかのように動いてる。
「まさか、ロード?」
僕はひとつの懸念を抱く。
もしかしたらゴブリンロードがいるのではないかと。
ゴブリンロード。
ゴブリンの進化した姿であり、体はオーガクラスにまでなり、高い知性を持ち他のゴブリンを従える、討伐ランクはB相当の強敵だ。
まさかこんなところにロードがいるなんて思ってなかった。
そう思った時、背後からまるで地響きのような咆哮が聞こえた。
手に持つのはギラギラと鈍く輝く曲刀。
体はオーガを超えて、まるで巨大な岩のような大きさ。
目は血走り、自分の目の前の
ゴブリンの王が僕を殺し食らうためにその凶刃を輝かせ血しぶきを上げ、唸りをあげて。
ゴブリン達が猛攻を仕掛けてくる。
まるで自らに訪れるであろう死から必死に逃れるように。
僕はその猛攻を流す。
正確には流すので精一杯。
徐々に攻撃を受ける。
「くっ、数が多すぎる!身体強化・
自分に更に身体強化の魔術を施し捌いていく。
ゴブリンに手一杯になってるうちにロードがどんどん近づいてくる。
「ぐおおぉぉぉぉぉぉぉおおお!!」
ロードが吼える。
もう目の前に来ていた。
手に持つ曲刀を振り上げていた。
僕は無理だと思った。
ロード程の巨体から放たれる斬撃が僕に防げるわけない、そう思った。
でもまだ死ねない。
僕はまだするべきことを果たしてない!
僕は刀を改めて強く握った。
『流田一刀流剣術-流-!』
振り下ろされるロードの凶刃を必死に流す。
なんて重い攻撃なんだ、流しきれない。
僕は流しきれずに弾け飛ぶ。
ロードとゴブリンは倒れた僕にトドメを刺すために群がってくる。
たった一撃、しかも流しきれなかったダメージだけでもう体はボロボロだ。
意識も薄れていってる。
でも立ち上がる。
正確には、なぜか立ち上がれた。
何かに後押しされるように僕は俺になる。
あの日々からの決別のために、俺は手にした刀を構えた。
「ここからが本番だ。俺がお前を殺す。」
『一刀龍水斬術-飛沫-!!』
俺は刀を振りぬく―――。
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