第2話 この勇者は…
いきなり魔王に死ねと言われた昇は絶望していた。今、自分の目の前に魔王は巨大な火球を作り出しているからだ。
もう駄目かと思って昇は目を閉じてしまっていた…と思ったがしばらく経っても攻撃はしてこない。目を開けると苦しんでいる魔王が見えた。
「ま、魔王様…。おのれ勇者、何をしたのだ!!」
魔王の周りに部下達の様なものが集まってきたが、昇を目の前にした途端同じ様に苦しみ出した。
「アナライズ[解析]。」
魔王がそう呟くと昇の頭上にパソコンのウィンドウ画面の様なものが表れた。
「名前は魅運 昇、ステータスは…魅了と運がカンストしているだと!他のステータスは村人と大差ないのにこの2つだけが何故!?」
「そ、そんな勇者が存在するなんて…サキュバスを早く連れてくるんだ!」
「はーい💖」
はしゃいだ声で集団の奥から現れたのは角と羽と尻尾が生えた女性だった。
「久々の男の子だもの、楽しませてもらうわね!」
「…あの、服を着てもらえますか?」
「はい!分かりました❤️」
「あの露出狂のサキュバス様に服を着させただと!?」
「もしやカンストはカンストでも最大値ではなく限界突破しているとでもいうのか…!?」
「ま、魔王様。それではここにいる誰もが勇者に勝てないという事に…。」
「いや、私にはステータス無効の中に魅了無効があるから問題ない。それよりも誰も勇者に近づくな、魅了されるぞ!」
「そんなの関係ないな!魅了耐性のあるオーガのあたしがどうにかする…」
「…オーガ様?」
「…坊主、筋トレに興味ねえか?」
「オーガ様!?」
「間違いない、この勇者は…魅了と運が限界突破している!?ならば、例の呪いの装備を二つ持って来い!」
「…はっ!」
魔王の部下が急いで例の呪いの装備とやらを二つ魔王に持ってきた。
「一つ目は装備したあらゆる生物の魅了をマイナスにカンストさせる呪いの装備、オークのステテコパンツです。この装備を作ったものは結婚する予定だった妻をある貴族に寝取られた仕立て屋の主人。作るにあたったその理由も単純でその貴族による復讐。その復讐方法とは自分と結婚するはずだった妻を寝取られた主人はその貴族に結婚式に相応しい服を贈った服の裏地にはオークのステテコパンツを付けるというものだった。それがある事を知らずに着たその貴族は取られた妻にさえ『ダサい』等という理由で破局。周りもそのダサさを認めて破局を許す程に呪いは強く、その貴族はどうする事も出来なくなった装備品となってます。」
「…その貴族と主人、オークのステテコパンツはどうなったのだ?」
「その貴族は一族から勘当され仕立て屋の主人は妻と結婚して末永く暮らしたそうです。裏地になったオークのステテコパンツは何故かいつまで経っても今の形を保ってます、魔王様。」
「…そうか、それならこの勇者もどうにかなりそうだな。」
「や、やめてください!そんなもの着たら僕はどうなるんですか!?」
「どうなるって決まってるだろう!ここで終わるんだよ!!」
魔王の部下が数人で昇に無理矢理オークのステテコパンツを履かせた。
「…意外に似合ってないか?」
魔王の部下の一人がそう呟いた瞬間、轟音が辺りに響いた。
「パンツが爆散した!」
部下の一人がそう言った後、あまりの光景に周りは騒ついた。しばらくして魔王が口を開く。
「二つ目の呪いの装備を持って来い!」
別の部下が慌てて持ってきた装備は禍々しい指輪だった。
「二つ目は装備したあらゆる生物の幸運をマイナスにカンストさせる呪いの装備、嘆きの指輪です。この装備は元々はある村の結婚の風習で付ける只の金の指輪でした。ある日ある新婚の夫婦の結婚式をしている最中に間が悪く盗賊共が村を襲いました。その盗賊共が金の指輪も新婚の夫の命も奪った時に新婚の嫁が覚醒し、闇の魔法の呪いの力で金の指輪を今の嘆きの指輪に。それを知らずに村を全滅させた盗賊達のリーダーがその指輪を装備した後に悲劇は起こった。突然、そいつは自分の部下の一人を殺し始めた。その時の顔はまるで全てに嘆いている様だった。憲兵団が駆けつけた頃には生存者は一人もいなかったそうだ。」
「ま、また僕にそんなものを!?」
「うるさい!さっさと装備しろ!!」
魔王の部下の一人が昇に嘆きの指輪を装備させた。すると、指輪から邪気が溢れ出てきた。これで勇者もお終いだと思われたが、突然指輪が輝き出して只の金の指輪になっていた。
「指輪が浄化された!?」
「こ、これではどうする事も出来ないではないか…。」
「それなら死んでくれないかな?」
誰かがそう呟き、魔王の背後から斬撃を放った。
魔王、勇者召喚する!? 迷人 @meizin
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