第48話 僕とパンツと相棒契約
「いやいや、それじゃ、白いパンツ履いている人は、あなたが大好きってことになっちゃうじゃないの。」
もう罵倒する気力も起こらないのか、立花さんは弱々しくそういうのだった。
「こんなに私と一緒に探偵をした人はいないのに、何一つ私の技を吸収していないのね。でも、結論はあっているわ。私はあなたが好きよ。この世の誰よりもね。」
でもね、と涙声になりながら、立花さんは続けた。
「私には、あなたと別れて再開するまでの間に、はじめての親友もできたのよ。
その親友はね、裏表がなくて、思ったことはすぐに口に出してしまうような子だけど、けれど、決して私に媚びてきたりもしてこなくて、そして、優しく手を差し伸べてくれたわ。あなたもよく知っている人よ。そう彩女よ。
だから、彩女が、あなたのことが好きなのだけど、と相談しに来たときは心がはち切れそうだったわ。しかし、もちろん私はそんな理由でほしいものを譲り渡すような人じゃないわ。彩女の性格同様、私も正々堂々と、あなたを手にいれようって思ったわ。
けれど、高校になって、あなたのことをストーカー…じゃなかった、捜査していたときに悟ってしまったわ。私はあなたに思い出してすらもらえないの、彩女はもうあなたと思いあっている存在だってことに。
そのことで、不安と焦りが大きくなって、つい、逮捕者が出てくるような重大事件まで解決してしまったりして、学校中の有名人にもなってしまったのだけれど。
そう、だから、遂に私は彩女との喧嘩の時に爆発してしまったの。そこに冷静な理由なんてなかった。彩女を傷つけることも、あなたに嫌われることもすべて頭から飛んでしまって、言ってしまったの。」
「いまでも、私は自分の探偵能力が憎いわ。こうしている今も、あなたが彩女と結ばれたことが分かってしまうのだから。」
けどね、と今度は、涙を浮かべながらも笑顔を向けて、
「こうやって気持ちを伝えられているってことは、私の探偵ごっこも無駄じゃなかったってことよね。」
そういうのだった。僕は、たまらなくなって、言い返した。
「探偵ごっこじゃない。しっかりと探偵だったよ。」
「あなたがそういったんじゃないの。昔も、今も。」
そう声を荒げる立花さんに、しかし、僕は冷静に返した。僕が昨日考えていた、立花さんへの気持ちを
「確かに僕は言った。けれどそのことは謝るよ。そのときは僕も気が動転していたんだ。だけど、君は、昔だって、人が喜ぶのが見たくて推理していたはずだし、僕の家族のことだって、ただ僕が驚き、喜ぶだろうって思ってやってくれたことだろう。
それに、僕は君の推理で、昔も今も助かったんだ。昔は、僕が認識していなかった家族との不和を言い当ててくれたおかげで、僕はそれに関して向き合えて、そうして今では、そのときよりも明らかに仲良く暮らしているのだから。それに、今だってそう。立花さんが探偵をしていたことで、こんな大切な思い出を取り戻せたし、なにより、罵倒ばかりだったけど、立花さんと一緒に探偵ができたのだから。」
だからね、と僕は最後に言った。
「恋人にはなれないけれど、君の相棒になれないだろうか。」
立花さんは、涙声ながらも、呆れたように、
「それじゃ私ばっかりマイナスじゃないの。あなたなんかを相手しながら捜査しなきゃいけないのだから。だから、私も一つ要求するわ。」
そして、長い黒髪を掻き揚げて、人差し指で僕を指していった。
「相棒は、共に名前で呼び合うことしましょう。」
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