第39話 僕とパンツと回想

 僕は考えた。

 立花さんのような秀でた推理力はないけれども

 彩女のように立花さんの人柄もよくわからなかったけれども

けれど、自分の持ちうる思考力と、そして少しだけど、関わってきた時間を思い出して、考え続けた


 何故、立花さんは、彩女に対して、傷付くとわかっていてそんなことを言ったのだろうか。

 何故、立花さんは、春樹のことを調査し始めたのだろうか。 

 初恋の人に知られる為だとしたら、そんな春樹のトイレ事情など、明かす必要のないことなのに。

 誰が、恋した人なのだろうか。


 わからなかった。僕には全然わからなかった。立花さんが言ったように、僕は鈍感だった。

 それに立花さんが言っていたように、恋心というのはきっと、理由のない、運命によって決まる不合理なことなのだろう。

 だから、理屈によって考えてもわからないのかもしれない、そう思った。


 立花さんと過ごした一週間もたってない日々を思い出していった。

 すらっとして、美しくて、頭も良くて、完璧で、自分でそれを自慢に思うほどに完璧だけど、それを口に出してしまって、

 すごい推理力で、大事件さえ見透かし解決してしまうのに、口は悪くて、僕に推理を語る前は僕の悪口がとめどなく溢れて、けれど、推理を語るときは口を挟まれることが嫌いで、

 自分が褒められると、つい笑ってしまう癖に、それでいて、いつもは一人で探偵して、誰にもそのことに関して話したりしないで、

 昔、友達に自慢したら、結局最後は自分のところに、悪口や陰口といった悪意に関してしか探偵依頼が来なくなってしまって、皆に嫌われ、探偵ごっこと言われるようになってしまったのに、

 そのとき、仲良くなって探偵としての自分を褒めてくれた男の子と出会い、そして恋をして

 そして今、傷付くかもしれないのに、いつかその男の子が思い出してくれるかもって探偵をして、大事件を解決しようとして、

 僕のパンツ透視能力を推理して、そして突然いつもは一人で捜査するのに僕を捜査協力を協力もとい強要してきて何故か春樹に関して捜査し始め、

 何故か自分の昔の話を聞いてもいないのに僕に話してきて、そして、最後は喧嘩別れして、僕が流してしまった

 そんな立花さんとの日々を思い出していった。

 そして、最後に、ふと、こんな真剣に考えていたのに、僕としたことが、いや、僕らしいといえば僕らしいのだが、坂道を走りながら登っていく立花さんの白いパンツを思い出した。


 僕は思い出したのだった。

 昔、僕の家から帰って行くとき、坂道を登って帰ってくる女の子のことを。

 僕の家から坂道を下って帰る彩女と、そして、坂道を登って帰っていく女の子がいたということを。

 そして、その女の子はいつも帰るとき、嬉しそうに、坂道をスキップして帰っていくということを。

 そのときにちらっと見える、可愛らしいパンツのことを。


 僕は全てを思い出し、そして、すべてが繋がったのだった。

 僕はこんな重要なことを忘れていたなんて…

 僕をパンツ好きにしたきっかけを忘れていたなんて…

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