第35話 僕とパンツと告白
すると、今度は心底呆れたように、
「こういうこと、私の口から言ってしまうのは良くないとも思うのだけれど、もう正直バレバレで焦れったいから言ってしまうわ。彩女はあなたのことが好きなのよ。だから、言ったの。私もあなたが好きだから、手紙を出したのって。」
さっきの動揺よりも確実に僕は大きく動揺し、
「え?なんでそんなことがわかる?というか、それが何故効果的な受け答えって言えるんだ?」
そう言った。すると、何故か怒っているかのようにきつい口調で、立花さんは言った。
「ムカつくのよ。そうやってどっちも思いあっているのに気付かないふりしていちゃいちゃしているのを見ているのが。だいたい、そんな風に毎日一緒に登校して、授業中もよく目線があったりとかして顔を赤くしたり、お昼一緒に食べたりして、そんな風にしているくせに、本当にわからないわけ?
言ってしまうけれど、彩女がパンツを白にしたのは、あなたが、友達と、白いパンツが好きだって話をしていたのを聞いて、幼い柄のパンツから変えたのよ。白いパンツみたいに初々しくていいことね!」
そういうと、動揺してしまっている僕を尻目に、興奮気味に続けて
「だから、言ったの。私があなたのことが好きだって告白したって。そうすれば、彩女は驚いて、その手紙に他の理由があることなんて考えもしないでしょ?」
正直、その時は意味がわからなかった。彩女が僕を好きだという話もそうだが、彩女の親友であるはずの立花さんが、ただ春樹の捜査のためだけに、彩女の目をそらすだけではなく、動揺させたなんて。それに、実際に喧嘩になったというのだから、そう言ったあと、詳しく聞いてきた彩女に対して、傷つくようなことを言ったに違いなかった。
僕はそのことがあまりにもイラついて、動揺も吹き飛んでしまった。
そのまま歩き続けようとする立花さんの前に僕は道を塞ぐように立ち、そして、思わず怒鳴り声を上げてしまった。
「なんでそんなことを言ったんだよ!もし仮に彩女が僕のことを好きだって言うのなら、そんなことを言えば動揺するってわかっていたんだろ?その後喧嘩して、熱を出すぐらい彩女を追い詰めたってことなんだろ?
なんでそんなことをするんだ?自分の探偵のためか?自分が優れているって、成果を出すためなのか?
僕は探偵のことなんて、立花さんと違って目の前で見たことなんてないし、本で読んで凄いなぁって思うぐらいだよ。でも、僕の方が探偵の本質っていうものを理解しているよ。
探偵っていうのは、いつも誰かの為に調査をするものだ。確かにその中で誰かを傷付けたりするかもしれない。だけれど、それは決して自分勝手にやっているんじゃない。誰かがそれをやることで幸せになると思って、依頼を受けて、そして謎を解くものなんだ。
けれど、君の場合は違うよ。ただ自分が探偵として優れていることを示す為だけに推理し、捜査しているんだ。
だから、君は大切な親友までも騙して、傷付けるんだ。そんなものは、探偵じゃない。所詮探偵ごっこに過ぎないんだよ!」
僕は怒りに任せて、そんなことを言ったあと、顔を立花さんに合わせて、そして、深い後悔をすることになった。
僕の前に立っている立花さんは、目に涙を溢れさせて、僕を睨みつけていたのだから。
「違うわ。違うわよ。私は自分の為になんか推理していないもの。
私はただ、凄い推理をして、凄い捜査をして、そうやって、私の名前が有名になっていけば、そうやって、名前と顔が有名になっていけば、いつか思い出してくれるのじゃないかって思っただけだもの。」
いつもの凛々しさなど欠片もない、涙声だった。目から涙を流し、そして最後に、
「けど、ダメみたい。私、一人で無駄に頑張っていただけみたいね。残念ながら、私たちの探偵契約は解約よ。彩女にごめんなさいって伝えておいてくれるかしら。」
そう言って、後ろを向き、僕たちが来た道を走り去ってしまった。
僕は探偵じゃないのだから、そんなことを言われても、全然立花さんのこと、わかってあげられないよ。と僕は一人呟いた。
坂道を走って登っていく立花さんのスカートは揺れ動いて、能力を使うまでもなく、白いパンツが見えてしまうのだった。
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