第32話 僕とパンツと風邪の幼馴染
その後はいつも通りだった。僕は、裏で策略が行われているとも知らずに少しだけいつもと違う、けれども日常といえる、そんな一日を過ごした。
そして木曜は、終わった。
変化が起こったのは金曜からだった。
僕はいつも通り時間ギリギリに起されて、その日は僕が朝食の当番だったため、妹と自分の分を急いで作り、妹とは違い、味も工夫も微妙な、いつも通りの朝食を食べて出かけた。妹より料理がうまくなってしまい、妹のチャームポイントをなくしてしまうようなことがないように頑張ってますっ!いいお兄ちゃんだろ?
まず、その日が日常と違ったのは、この時点からだったのだ。彩女からの催促のチャイムが鳴らなかったのであった。
少し疑問に思いながらも、彩女も一日ぐらい寝坊して遅れてしまう日もあるのだろう。今日は幼馴染の僕が優しく起してあげようじゃないか。なんてのんきに考えていた。
僕と彩女の家は確かに隣同士である。僕たちの家は、少し、というか、僕からしたらある程度急な坂道の上に立っている。
彩女の家は僕の家より坂道を下ったところにある。といっても隣同士なので大して高さは変わらないのだが。そして、学校は、その坂道を登らなくてはいけないのであった。この坂のせいで、毎日の学校生活は憂鬱から始まってしまうのだから、やってられないのである。
さらにやってられないのは、先に述べたように、この彩女の家が坂道を下ったところにあるということにある。一緒に帰った後、あ、渡すものが、とか、忘れ物ないか確認とかいって、地面においた自分の荷物を確認しようとしゃがんで幼馴染のパンツをみようとする。けれど、この坂道の関係により、そういう状態になった時、確率的に彩女は自分の家に近い側に立っていることが多いのである。何が言いたいのか、ってその状態を頭で想像してみてくれ。つまり、彩女が坂道の下り側に進んでいるため、自然、僕の目線はかなり頭を下げてみない限り、スカートしか見られないのである。もちろん、その情景はパンツが見えないとしてお至高なのだが、見られるならば、見たい。けれど見られないのである。エレベーターといい、坂道といい、人間も自然もこのパンツ好きの僕にパンツを見せないよう必死なのである。
…本題に戻ろう。
僕は、坂道を少し下って、彩女の家の前の門で、チャイムを鳴らした。
僕はてっきり寝坊した彩女が出てくると思っていたのだが、出てきたのは、インターホン越しに聞こえる、彩女のお母さんの、ちょっと待っててね、優くん。という返事だった。流石にこの歳で彩女のお母さんにそう呼ばれるのは恥ずかしくもあった。
少し待った後、すこしお化粧でもしていたのであろうか、うっすらと化粧をした美しい女性の方、すなわち彩女のお母さんが扉から出てきたのであった。
おそらく僕のお母さんと同い年なのだろうが、なんでこうも他の家のお母さんっていうのはこうも魅力的なのだろう。彩女と同じように香るほのかなバニラの香りと、彩女よりも一回りグラマーなボディーに女の色気があった。うっすらとしてある化粧が顔にいいようにマッチしていて、それがさらに魅力を引き出していた。なんでこんなにも違うのか。うちのお母さんなんて、色気のいの字もないというのに。まぁ、彩女を産み、育てるぐらいなのだから、こんな変態野郎のお母さんとは比べんものにならないのかもしれないが。
「優くん、久しぶりね。大きくなって、立派になったわね。」
そういいながらも、すこし困ったような顔をしている彩女のお母さん。僕は嫌な予感がして
「彩女はどうしたんですか?」
と聞き返した。そうすると、
「彩女は風邪をひいてしまって、いま寝ているの。今日は学校をお休みさせようと思っているわ。ごめんなさいね。」
そういってきた。
ぼくは、お大事にと伝えておいてください、ありがとうございます。と社交辞令を言って、その後、学校に彩女が欠けた状態で向かった。
たったのそれだけのことだったのだが、その時僕は既に、何か嫌な予感を感じていた。
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