第30話 僕とパンツと公園の男の子

 もちろん、私はそういった依頼は全て断っていったのだけれど、その時にはもう遅くて、私に調査してもらってそういったといった文言が言い訳として使われるようになっていったわ。

 例えば、立花さんに調査してもらって、あなたが私の陰口を言ったって言っていたんだけど、どうなの?とか、そんな感じに。結局のところ、ただ、その陰口とかの証拠が欲しかったってわけ。誰を陥れるかなんて、もう決まっていることなのよ。

 そうやって使われるようになってしまったから、私はその後、あらゆるところで、『探偵ごっこ野郎』として陰口を言われ、虐められたわ。

 私のお父さんが警察だったこともあって、その時は学校全体で、教師たちが圧力をかけて、その話をさせないようにしたのだけれど、もう後の祭り。他の人たちと、私の溝は広がり深まるだけだったわ。

 そして、私はその頃から学校に行かなくなり、公園で暗くなるまで、本を読むようになったわ。


「なによ、こんなにシリアスな話をしているのに、こんな純粋な美少女が虐められているなんていう話をしているというのになんで、興味なさそうに、その話なんか関係あるのかよ。みたいな顔しているのよ。

 は?なにも言ってないだろ、ですって?

 もう顔がうるさいのよ。そうやって思っているのがバレバレなのよ!だから途中で遮らないでって言っているでしょ!

 え?可哀想で、その時いたら抱きしめてあげたい、ですって?

 うわっ。パンツ好きでさらにロリコンとか本当にドン引きなのですけれど。今までの登場ありがとうございました。二度とこの本には登場しないでくださいよろしくお願いいたします。

 顔赤くなっているですって?気のせいよ。目がおかしくなったんじゃないのかしら。


「話を戻すわ。そんな公園で過ごしていたある日のこと、本を読んでいる私に、話しかけてきた汚い男の子がいたわ。その男の子は、

「いつも本を読んでいるね、何の本を読んでいるの?」

 なんて聞いてくるものだから、私は、初対面でなんて失礼なことを聞いてくるのか。親の顔が見てみたいわ。って思ったのだけれど、答えてあげたのよ。

「あなたに理解できるものではないわ。でも教えてあげるわ。推理小説よ。」

 って答えてあげたの。

 なによ。そのときからこんなに口が悪かったのか、ですって。そりゃ文面的にはそう思うのかもしれないけれど、あなただって、いきなり猿が敬語を使わずに話しかけてくれば、なんだこの下等生物がって思うでしょ?というか、もうしゃべっていることに驚いちゃうでしょ?それと同じ。私からしたら普通の人が私に普通にしゃべってきただけでも驚き、なのよね。

 そうすると、その男の子は、その日は帰るまで私に話しかけてくるものだから、さっさと追い払いたくて、仕方なく、いいえ、ここで意地を張っても仕方ないわね。正直、一か月ぐらい誰とも口をきいていなかったから、嬉しくて、つい、その男の子が今日昼何を食べたとか、宿題に何が出たとか、どんな授業がすきなのか、とかを当ててみたりしてしまったわ。

 次の日も、男の子は公園に来て、私に話しかけてきたの。今度は推理問題集的な本を持ってきて、

「昨日がんばって解いてみたけど全然わからなかったんだ。」

とか言って。だから、私はそこにある問題を一問三秒ぐらいの速さで解いて見せたの。

 そんなことを一週間ぐらいやって、私たちは、交友を深めたわ。

 その男の子の家に行ってみたこともあったし、ご飯を頂いたこともあった。

 けれど、それがまずかったのね。私は、男の子が、その家族と血がつながってないということが推理できてしまったわ。

 だから、私はいってしまったの。君と家族は血がつながっていないんだね、って。

 私はただ、私の推理を褒めてほしかったの。だけれど、男の子を傷つけてしまったわ。

 彼は、さみしそうな顔を浮かべて、目に涙を浮かべて、言ったの。

 君の推理力はすごいね。でも、僕が読んだどの本でも、推理力は誰かのために使うもので、誰かを温めるために使うものなんだと思うよ。」

 私はここでやっと気づいたの。私は自分の為だけに、推理力を使っていると。そして、男の子を傷つけてしまったということも。

 私は謝ろうと思ったわ。でもその日は言えなかったの。

 そして、その後男の子と会うことはなかったわ。

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