第27話 僕とパンツと手つなぎ
「この二つで、怒っている理由は全部なのか。」
その後、恥らって話を始めない彩女に対して、しびれを切らして言葉を出したのは僕であった。
「うん。その二つだけだよ。」
なぁんだ、そんなことか。僕は内心思ったが、心を読んだかのように、彩女は続けた。
「そんなことか、て思ってるかもしれないけど、私は昨日結構悩んだんだからね。華憐ちゃんかわいいし、そんな女の子から手紙はもらっているし、いきなり昨日はお昼一緒に食べてくれなくなっちゃうし、もしかしたら私に飽きちゃったのかな、私と話していても楽しくなくなっちゃったのかなって、心配になっちゃったんだから…」
僕はその言葉を聞いて、内心興奮していた。ちょっと待って。これって、もう僕のことが好きってことだよね。僕のことを考えて昨日心がいっぱいだったってことだよね。ということは、もう僕ここで言っちゃっていいんじゃないですか。告白しちゃっていいんじゃないですか!
そう思い、告白しようとした…が、ギリギリここで踏ん張った。いかんいかん、僕としたことが。これは幼馴染として好きであるということであるに違いない。これは夢じゃありません………!これが現実…!
「だって…優くんのこと、好きだから…」
身長が僕よりも少し小さめの彩女は赤らめた顔が僕より下になり、自然と上目遣いになってしまっていた。僕の心の中で、天使と悪魔がいざなった。
悪魔 : もう、これは告白しろというサイン!いけ。ここまできたら、勝負だろうが!
天使 : いいえ、あなたは顔も能力も平凡。モテるはずがないわ。幼馴染効果だけで押し切れるはずもないほど残念な男よ。無理無理。あきらめなさい。冷静になりなさい。とりあえず深呼吸しなさい。
なんか天使の言っていることのほうが暴言に近いのであった。どうなっているのか。しかし、ここはなんとか冷静になり、思いとどまった。そう、幼馴染として、てことだ。
だが、次の行動は、天使も予想外だっただろう。彩女はそっと手を伸ばし、僕の手をつかんできたのであった。
「ど、どうしたんですか。彩女さん、いきなりお手をお繋ぎになって…。このことをしっかり説明していただけないでしょうか。」
もう言葉がめちゃくちゃになってしまった。頭がパニック状態であった。
だって、仕方ないだろう。生涯、体育の時以外、女の子の手なんて握ったことがないのだから。コンビニの女の店員さんの手が当たっただけで軽く興奮してしまい、毎回おつりが出るような金額で払ってしまうような僕なのだから。
「なによ。別に理由なんていらないでしょ。私が握りたいから、握ってるの!そんなに手を握るのが嫌なの?数学みたいに理由がなくちゃいけないの?世の中数学じゃわからないこともあるのよ!」
「なんでここで数学の話題出して、さりげなく悪口いっているんだよ!なんだ。数学研究部に入っている、乙女心のわからない僕をディスってんのか!そうさ。僕は確かに数学的なことを使って、結局それをエロの方向にしか使ってないけれども、たとえば、エスカレーターの設計が、男性の身長の幅からすると、どうやってもパンツがみえないような数学的な設計になっているということを調べて悔しがったりしたりしかしていないけれども、僕の前で数学を悪くいうことは許さないぞ!」
もう何言っているのか自分でもわからない状況だった。パンツが見えないようにしているのは自然ではなく、人間だったのである。自分で自分の首を絞めているのである。どこかのメーカーが、パンツが確実にちらりと見える角度で提供して、それが日本国で採用されてて毎日見れるようにならないだろうか。署名活動して政府に出してこようかな、とその時は現実逃避してパンツに関して考えていたぐらいであった。
しかし、それは彩女も同じだったのだろう。ツッコミもなく、お互い時計をみて、時間が危機的だということを悟りながらも、顔を真っ赤にしながら、同級生たちがみんな学校について、学生が誰一人歩いていない通学路を、手をつなぎながら向かったのであった。
ちなみに、結局遅刻した。彩女はいつもの大人し目の雰囲気通り、おしとやかに謝ってなにも御咎めなしで許された。
僕はというと、お前が遅刻したせいで彩女も遅刻したと担任に言われ、最悪なことに、一時間目がこの担任の授業だったために、その一時間は、全部の問題をみんなの前で開設する羽目になった。まぁ数学だったのが不幸中の幸いであった。こういうパンツ大好き変態君キャラってのも、損な役回りだと思った。
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