第25話 僕とパンツと嫉妬
考え続ける僕に痺れを切らしたのか、彩女は
「ここ最近の話で、何か思い当たらないの?」
と言ってきた。そして、僕は思いついた。
「放課後、彩女の席に座ったり、寝てみたりして、癒されたことを怒っているのか。」
「ちょっと待って。さすがに意味が分からないのだけれど。何やってるのよ!」
またまた、自分で自分の墓穴を掘ってしまったようだった。
「どうしてそんなことしたのよ!」
「いや、これは確かに僕は悪いかもしれないけれど、彩女だって非がないわけじゃないと思うよ。」
この一言、まさに火に油を注いだようで、
「なんで開き直ってんのよ。私の机に座って優くんがいやされたという行為のどこに私のせいだって言えるところがあるっていうのよ!」
「本当に思い当たらないのかい。」
遂に言い返せた。彩女は意味が分からない様で戸惑い顔であった。この局面、流れはすこしずつ僕に流れ始めてきていた。
「いや、全然わからないのだけれど…」
「昨日、体育着、机の上に置き忘れていっただろ?」
「まさか…」
「そうさ!わざわざ机の上に使用済みの体育着をおいていくなんて、健全な男子高校生からしたら嗅がないではいられないだろ!ほのかに香る汗の香り。青春の香り!寧ろ彩女が僕を誘っているとしか思えない!いや、確実に誘ってきていた!誘ったのだから、もちろん悪いのは彩…」
殴られた。彩女にグーで殴られた。親にも殴られたことがないのに!
「なにをするんだ!人に暴力をふるうなど言語道断!犯罪だ!」
「犯罪っていうのは人間同士の間で初めておこるものなのよ。なにが香りよ。香りにつられて体操着をくんくんするなんて人間じゃないわよね。だから気が済むまで殴っていいわよね?というか許可なんてとる前に殴る!こいつは殴らないとダメだっ!だいたいなんでそんなことしたのよ!」
それはさっき言ったのだが、しかし、もっと明確に理を述べるなら
「彩女が好き…だから?」
そういうと、いままで殴っていた彩女の手がぴたりと止まって、見上げると、真っ赤な顔をした彩女がいた。
「もう、仕方ないわね…でも、それじゃないわ。」
顔を赤くしながらもすこしにやけている彩女。僕を殴って少しすっきりしたのだろうか。
「それ以外だと…」
なんで怒っているのか、全然思い浮かばないのであった。昨日は別に怒っていなかったわけだし、あっていない間に何かあったのだろうか。いや、それともなにか僕がその間にしたというのだろうか…
「はぁ…まぁ、優くんらしいっていえばらしいのだけれど…」
呆れた顔でため息までつかせてしまった。これがエロゲーなら好感度が下がった文字と音楽が流れてくるところであった。おっと、僕はまだ十八歳以下なのだから、ギャルゲーということに体裁上しておかないと。
「まず、私が怒っているのは…」
微妙にためてくるのであった。僕は緊張とこの謎が解けるという興奮に思わず唾を飲んだのだったが、
「昨日、一緒にお昼を食べてくれなかったことです!」
…それだけ?
「流石に堪忍袋が小さすぎるんじゃないか?」
驚きと呆れで聞き返してしまった。
「なによなによなによ!だって私、優くんとのお昼ご飯楽しみにしていたのに。それの為に学校に行ってるといっても過言ではないのに、そういういいかたはないと思うんだけど。というか、高一の時約束したじゃない。毎日一緒にお昼を食べてくれるって。約束破ったんだから怒られて当然です!」
「いや、一日だけだし、重要な話があったわけだし…」
「一日だって浮気は許しません!一日だけ浮気許してあげるなんて聞いたことありません。というか重要な話って、パンツの黄金比の話がそんなに重要だったの?」
「いやいや、浮気ってなんだよ。春樹は男だし、というか一日ぐらい別にいだろ。というか、僕にとってパンツの黄金比に関する話はレベル5級の重要な話だよ!僕たち男子にとっては!」
こうやっておどけながらも、本当の理由を言うわけにもいかないし、それをごまかしてることには罪を感じていた。まさしく妻も大好きだけど、つい一日浮気してしまった旦那さんの気持ちそのものであった。こうやって旦那さんは浮気にはまっていくのだなぁ…
「でも、さすがに一日ぐらい他の人と食事しただけで怒りすぎじゃないか。」
「まぁ…そうだけど…」
そういって顔を赤くして、彩女はそわそわしながら小さい声で、
「だって、優くんのことが…好きだから…」
「え?なんだって?全然聞こえないよ!」
「二度は言わないよ!もう知らない!」
そういって怒ってしまった。なんで僕の一人視点の文章なのに、僕の聞こえなかった言葉までしっかり書かれているかだって?それはその言葉は完全に僕の妄想で補ったからである。そっちのほうが、読者も楽しく、僕も幸せに生きられるからね。
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