第22話 僕とパンツと朝のお迎え

 僕が妹に起こされて下に降りていくと、朝食が用意されていた。

 僕の両親は二人とも働いていて、朝が早い仕事をしている関係から、朝食は自然と妹と僕が交代交代で創るようになっているのだ。僕が食事を作る時もそうでないときも妹はギリギリの時間に起こしにくるのだが。それでその日は妹が担当の日だった。目玉焼きと、ちょっとしたサラダと、それから食パンといういつもの組み合わせだった。それを普通に食べようとして、僕は目玉焼きをパンの上に乗っけて食べ始めた。

 目玉焼きをパンに乗っけるか乗っけないかで人それぞれ食べ方があるだろうが、目玉焼きをパンに乗っけて食べる同志の方々ならわかるであろう。半熟の焼き加減の目玉焼きだと、食べていくうちに黄身が垂れてきて、結局指にかかってべとべとになってしまうということが。僕はそれがために固めの焼き方の目玉焼きのほうがいいといったが、普通にパンと目玉焼きを別々に食べる妹は、半熟がいいといっていつも僕も妹も半熟であったのだ。

 だが、その日は違った。

 僕の目玉焼きは固めで黄身が垂れてこないのであった。

 今日は固めになってしまったのかな、と妹の目玉焼きを見てみると、しかし予想と違い、妹の目玉焼きは半熟なのである。つまり、焼く時間を微妙に調節して、妹は、自分のは半熟、僕のは固めにしてくれたのであった。なんと兄思いの妹なのだろうか。そう思って妹の顔を見ると、妹も僕のほうを見ていたようで、目があってしまった。

 妹はすこし僕から目を逸らして

「目玉焼き…調節してみたんだけど、どうかな。」

 そんな風に聞いてくるのである。かわいらしい反応である。

「とても美味しいよ。手に垂れなくて今日はとても気分爽快だ!一日中ハッピーな気持ちで生きられるよ!固め最高だよ!」

 そうやって素直に嬉しさを表現すると、妹は

「そんなことで一日ハッピーになっちゃうんだ…」

 すこし苦笑いながらも、嬉しそうに笑った。固めの目玉焼きも最高だけれど、胸がまな板固めのスレンダーなうちの妹も最高であった。そうやってほんわかとした学校前の朝ごはんは、突如妹の一言で幕を閉じた。

「そういえば、彩女さんがずいぶん前にうちのチャイム鳴らしてきて、まだ来ないんですか、って言ってきたよ。」


 なんでそんな重要なことをずっと言わないでいたのか!

 朝起こすのだって、いろんな注意をいうのだっていつもギリギリじゃないか。

それに、彩女はいつもはおとなしそうな大和撫子だけども、怒る時は相当怖くなるのだから、まず起きたらすぐに言うべきじゃないのか。

 妹は僕をいじめたいのか。僕がぼこぼこになってしまえばいいと思っているのか。精神的にやられて立ち直れなくなったらどうするつもりなのか。ドSなの?それともそんな状態になったお兄ちゃんを癒してあげたいとか思っているの?怖いよ。怖すぎだよ。二次元だったら、怖可愛い、とか思えるかもしれないけど、現実だともう怖いだけだよ。ドン引きだよ。

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