第20話 僕とパンツと見つめ合う男たち
向かい合った春樹の顔の、まず目を四秒ほど見つめる。
春樹も僕の目を見つめ返す。同じぐらいの身長であるから、上目遣いにならないのは残念ではあるが、僕が彼よりも小さいということはなかっただけ幸いであった。
そのあと、僕はゆっくりと視線を下ろしていった。そうやって視線を下げていったため、春樹がどんな顔をしているか全くわからなかったが、唇は少し苦笑い気味の笑みを浮かべ、ほっそりとした首に、痩せすぎず、しかし美しい感じに鍛えられているウエストの部分を経過して、そして、目的のパンツ部分に目線が至るのであった。
そして、ここが何よりも重要。そこで全神経を集中させて能力を発動させた。ジャッジメントタイムであった。外から見れば、壁ドンした男の方が、されている男の方の股間を、それも話しかけてはいけない雰囲気を醸し出しつつ真剣な眼差しで凝視しているのであった。見つめあっているよりも謎の状況。薔薇専門家、腐女子の方々ももはや未知の状態なのであった。
判断がついたあと、僕はすっと目線をあげ、再び春樹の顔を見つめた。
「突然どうしたの?」
そうやって、顔を赤らめながらも今回はしっかりとツッコミを入れてくれたのだった。助かった。今回もツッコミのないまま、顔を赤らめて俯かれたりしたときには行くところまで行くところであった。この原稿の応募場所がどっかのBL雑誌になるところであった。なのに、こんなナイスなツッコミで冷静に対処すればいいところだったのに、僕の口はおかしなテンション、否、イケメンの魔力の前におかしなことを言ってしまったのだ。
「春樹のトイレに行っている姿ってなかなか見ないからさ…春樹のトイレに行ったあとの姿が、その、とても綺麗で、つい見惚れてしまったのさ。」
高校二年に入って三回目のイケボである。恥ずかしかった。自然僕の顔も真っ赤になってしまう。
その言葉に、更に悪いことに、春樹も顔を真っ赤にして俯いてしまうのだから、もう何が何やら…ほんとツッコんでくれ。この疼きを止めるために何か僕に突っ込んでくれ!
思い出したくもない水曜の昼の夢であった。
重要な部分が書かれていない、ですって?あなたは本当に初歩の初歩から手取り足取り教えてあげないとわからないのかしら。つまり、ここまでして、結局パンツはそのままだった、という残念なオチ付きの話だってことだよ…
次に木曜日のことを語ろうと思うのだが、そろそろ章を変えたいと思うのである。
というのも、確かに三章目の話が長くなってきている、というのもあるのだけれど
今回記している出来事に関して、この木曜日というのは、いわばきっかけであるからである。
木曜日は、変化というのは、常に裏から始まるものである、ということを僕に痛感させたあの策略が始まった日なのであった
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