第18話 僕とパンツと打開策

 本題に入ろう。


 まず、一週目の水曜日について語ろう。

 彩女の誘いを断ったあと、僕は計画通り、春樹とお昼ご飯を食べた。ちなみに、彩女が食べる相手がいなくなって困らないように、しっかりとここは立花さんがご飯に誘ってくれていたので一安心である。

 実際立花さんは普通みんなに優しく、気の利くタイプなのである。絶対に人を罵倒したりしないタイプなのである。彩女をすかさず食事に誘ってあげることのできる理想のタイプなのである。なのに、なんで僕はあんな言われを立花さんにされなければならないのか…そんなことを思いつつも、春樹とたわいない会話をし、時は過ぎて、いつの間にかお弁当も食べ終わっていたのだった。

 と、そこで僕はふと気づいたのである。

 どうやって僕は春樹のパンツを見ればいいのだろうか。

 この疑問をみて、読者は、なにを言っているんだ。そもそもこの物語は、この主人公の僕がパンツを透視する能力に目覚めたって話じゃないのかって思ったことだろう。実にご名答。しかし、その能力には制限があるのだった。

 先に述べた通り、四秒の判断時間。そう、ジャッジメントタイムがあるのである。故に、僕は四秒間、春樹を動かない状態にして、それも下半身の、それもパンツの部分を見つめなければならないのであった。そんなこと、誰かと話しているときに見つめればいいじゃないかって、そうやって簡単に思えてしまうだろう。僕も確かに立花さんから話を受けたときには確かに思ったものだ。

 しかし、そのときが体育となれば話は別である。

 この学年の僕たちは、水曜日はサッカーに、木曜日はバスケットボールというハードスケジュールである。

 つまり、ほぼ常に動き続けているということ。それも準備運動までもがボールを使った運動で構築されていて、ひたすらに動くというのである。そして、さらに追い討ちをかけるように、春樹は、歴代の、全世界のイケメンの例にもれず、運動がかなりできるタイプの人間である。まさしく、体育中に誰かと話してサボるような男ではないのである。それも試合以外のときだって、審判をしっかりとこなし、止まることのない、まさしく体育での生徒の見本のような男なのである。僕なんて体育ってのは、どれだけサボってどれだけ人におんぶ抱っこで暮らしていけるかを学ぶ授業だと思っているのに…


 ここまで語った通り、体育が始まってしまえば、僕のジャッジメントタイム発動機会を得るのは絶望的である。体育が始まる前と後ならば、着替え途中にパンツをチラ見すればいいことなのだが、問題なのは、トイレから出てきてから体育中のパンツの確認であった。

 こんなに危機的な難問にぶつかったのは何年ぶりだろうか。否、これは人生初にして人生最大の難題かもや知れなかった。そして、そんなクソのような難題が人生最大の問題であるという時点で僕の人生は相当危機的である。どうすればいいのだ。どうすれば、前向きに、いや、むしろ春樹のパンツに目線を向けられるのか。


 しかし、そんな刹那、僕に電流が走ったのであった。


 僕の目の前に思い浮かばれたのは一つの幻影。

 その幻影の中ではまさに僕が昨日見たエロDVDでの光景が広がっていた。

そのDVDでは、かわいい女の子三人が、女子更衣室で、下着姿の状態で、

B.Aちゃんの下着すごいかわいいねぇ

A.いや、そんなことないよ。私のより、Cちゃんの下着の方が星型とかついていてかわいいと思うな。

C.な、なによ。私のが胸が小さいから、子供っぽい下着だって言いたいわけ。

A&B.そういうCちゃんがすごいかわいいよ!

 …

 そして百合展開ってやつだったのであった。


 今までの話と全然繋がってない、ですって?

 君たちの思考の鈍さには呆れてしまうわね。けれど、名探偵として名高い立花さん風の僕が一から語って差し上げましょう。


 つまり、そのときの僕の状況とそのエロDVDでの共通点はまさに、「同性同士」が「下着姿」を見ているという点にあるのである。

 そうなのである。僕が言いたいことは、同性同士が下着姿を見せ合ったり、触りあったりすることは、よくあることで、別に何ら不自然なことじゃないということである。エロDVDでみることが現実でも起こっていると思っているのだって?痛々しいだって?夢見がちだって?夢見ることのなにが悪いって言うのだ。いいじゃないか。彩女と立花さんがいちゃいちゃして着替えているのを夢見るぐらいの性への解放、認めてくれたっていいじゃないか。


 完璧なひらめき…いや、むしろ開き直りで打開策ならぬ暴走案であった。もう想像に難くないであろう。もう語りたくもないほどの出来事であるのだ。割愛してしまいたいのである。

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