第16話 僕とパンツと推理・作戦
その翌日、ちなみにその曜日は水曜日であった。なぜこの曜日をはっきりと覚えているのか、といえば、ずばり、その日は体育が五時間目にあったからである。
僕のクラスでは、体育が水曜日の五時間目と、土曜の三時間目にあった。そのため、必然的に調査はこの水曜の五時間目と、土曜の三時間目の前後の時間ということになった。
立花さんが春樹のトイレ事情に関して推理したことは以下の通りであった。
・トイレの中で誰にも見られてはいけない着替えをしている。
この場合、普通に考えれば、なにか怪我とかで傷がついたりしているのかも、と僕は考えたのだが、立花さんいわく、
「なにをいってるのかしら。あなたの推理力っていうのはこう自分のイメージからなにも考えずに答えを出してしまうのかしら。いや、これは最早イメージすら思い浮かべられてないわ。アホね。アホ丸出しだわ。だいたい、すこしでも春樹くんのイメージが頭に思い浮かんでいるなら、きっと、春樹くんが普通に男子の中で着替えを行っている姿が思い浮かぶはずよ。その時なにか傷があった?もし、トイレでしか着替えられないほどの傷があるのだとすると、あなたはいままで彼が着替えをしているところを見たことがないはずなんだけど、そんなことないわよね?私だってなにも観察してない状態であなたみたいな藁以下にすがるわけないじゃないの。トイレには彼はなにか服を持ち込んだりしていないのだから、そういうことは考えづらいわ。」
だそうだ。
彼女の理論を説明するだけなのに、毎回悪口が入ってくるものだから、自然とコメントが 長くなってしまう。もう懲り懲りだよ…
・トイレの中でなにかしらの行為を行っている。
これは立花さんが赤面して言っていた行為の可能性も…ないわけではないだろうけれども、それはもちろん、それを行って、運動能力が格段にアップする能力が春樹にあれば可能性はないわけではないが、しかし、現実的にはありえないだろう。といいつつも、僕は実際にパンツを透視する能力を持っているのだから、むしろそっちの能力の方がまだまともであるようにも思えてしまうのが悲しいところである。
しかし、そういう行為ではなく、わからないが、なにかしらの行為を行っている可能性はあると思う。なにをしているのか、と聞かれると答えにくいのだが。
で、この二つのことを考えて、考案した立花さんの作戦はこんな感じである。
①水曜日は、春樹がトイレにいく二回の前と後にパンツに変化がないかどうかを観察する。
まずはそれによってパンツに変化がないかを確かめる。つまり、先に述べた①の可能性に関しての検証を行う。
②土曜日は、春樹と同時に入り、春樹のトイレでの動作音を確認した後、その後、春樹がトイレから出たことを確認し、春樹が入っていた個室を探る。
これはもちろん先に述べた②の可能性の検証であるのだが、流石にこれは気が進まないのである。これは男であろうと女であろうと同じだろう。だいたい、男のトイレの音を探って気分爽快になる男なんていると思うか?最悪だろ?なにが楽しくてそんなことをする奴がいるのだ。この世にはトイレに盗撮カメラを仕込んで楽しむ奴がいるが、僕はそいつらの気持ちは全然わからないといえば嘘になってしまうが、しかし、友人のトイレに耳を立てるなんて趣味はないのである。あぁ、憂鬱になるよ。本当に。立花さんにも、彩女のトイレを撮ってきてもらわないと…おっと、誰かがきたようだ…
③そして、この③こそがこの作戦の重要なところで、これを二週間行うということである。
なぜなら、僕が話したことによって、なにかしら警戒しているであろうが、しかし、一回目の観察、そして、二回目の細かい観察が来て、なにも見つからないあきらめ顔を僕が見せれば、春樹は、なにも見つからなかったと、安心してこの件を片付けるであろう。という算段なのである。
そして、さらにこの報告は調査後すぐにではなく、金曜であるという点である。
なにかしら、春樹の秘密に関して分かったとすれば、すぐに立花さんに報告しそうなものだが、これをあえて金曜に固定し、さらにこのことに関してクラスで立花さんと僕が直接話すことなく、お互い他人のように振る舞い続けることで警戒心を解くという作戦である。
まぁ、最後に関しては、こんな変態と知り合いだと思われたくないもの、との冷たい一言付きであったが。辛すぎるよ。ガラスの心がバリバリだよ。この傷はパンチラでしか満たされないよ!
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