僕とパンツと親友
第12話 僕とパンツとイケメン
イケメンとはなんだろうか。
君たちにも経験があるであろう。クラスの中でイケメンと呼ばれ、女の子に大人気だったあのイケメンという存在が。
しかし、学校でイケメンと呼ばれる男たちは、ただ顔がイケメンであるのではないだろう。確かに顔が美しいのであるが、それ以上にプラスになる何かしらが存在している。たとえば、性格が優しい、スポーツができる、勉強ができる、背が高い…そういった顔以外のプラス面が存在しているように思われる。そもそもとして、顔が美しいぐらいでは、女の子が寄ってくるには寄ってくるだろうが、学校を代表したイケメンとまではなれないであろう。つまり、学校を代表としたイケメンというのは、顔だけでなく、本当に人間としてもいいやつなのである。
だがあえて、僕はこのイケメンと呼ばれる人間は僕たち、モテない人間を苦しめていると訴えたい。だいたい、顔だけがいいのなら、あいつは顔だけでモテやがって、って何かしら割り切れるというのに、更にいい人となれば、もう自分がそのイケメンになにが勝っているのだろうか、いやそもそも僕になんて価値があるのだろうかなんて人間の価値に関してまで考えてしまうぐらいに僕らを追い込むのである。
さらにいってしまえば、そういうマイナス思考に僕たちを追い込むことで、僕たちはさらにやる気を失い、持っている能力さえどんどん下がってしまうのである。それはそうだろう。毎日学校にいけば女子から笑顔を向けられ挨拶までされて、クリスマスからバレンタインまで幸せにイベントを満喫することもできれば、日常なんてハッピーで自然と笑顔がこぼれて、性格だって優しくなってしまうだろうさ。僕なんて、女子にも大切に扱われず、イベントはほとんど普通の日に過ぎないのだから、性格がこんなことを書くほどに卑屈になってしまっても仕方ないのである。
つまり、何が言いたいかというと、イケメンが僕たちをブサイクにしているということだ。この世の中は持つものは持ち続け、持たぬものは一生モテないというのか。アメリカよ。機会の平等はどうしたというのか。僕たちにもモテる機会を!
そう、僕のクラスメイト、そして親友である春樹も、今まで語ったイケメンの例に漏れない奴であった。
先の『彩女パンツ革命事件』、『立花紐パン事件』の翌日の放課後、僕は春樹と一緒に学校のベンチに座っていた。
「こうやって君とベンチで二人きりで話すのも久しぶりだね。」
そうやって、爽やかな笑顔を向けてくる春樹。その笑顔が輝いていて、思わず見つめてしまう。やめてくれよ。別の方向に目覚めてしまいそうだった。
「わざわざ放課後悪いな。ジュースの分を埋め合わせってことにしといてくれ。」
僕がわざわざ一緒に話さないか、と呼んで、ジュースを奢っている状態である。
別にジュースを奢ったのは、なんら意味があるわけじゃなくて、それは、僕らの中で、お願いごととか、悩み事を聞いてもらう時の、儀式のようなものだった。
僕らは中学二年のときからの友達だが、今のクラスと同じで、たまたま隣になり、そしてたまにお話する。そんな仲だった。
今よりもすこし恥ずかしがり屋だった僕は、応募した声優イベントが当たったにはいいが、ひとりだし、初めてだし、誰か一緒に行ってくれるやつがいないかを探していたが、なかなか見つからなかった。というか、そもそも恥ずかしがり屋でなくてもオタクであることを隠していれば、見つからないほうがふつうである。オタクを公表しているやつもいるが、そいつらはそいつらでクラスで固まっているのはいいが、女子からの痛い目線というものがあるのである。僕は二次元も愛しているが、三次元も愛しているのだ。だいたいパンツ好きがばれただけで現在あだ名、エロメガネで女子の間で呼ばれているぐらいなのだ。実に女子というものは怖いものである。雑誌に載っていた、オタク男子のブーム的なのはどこに行ったというのか。結局あれも※ただしイケメンに限るってやつなのか。
しかし、その例外にあたる男が親友の春樹だってところが世の中皮肉だなと思うのである。春樹は、僕が当たっていた声優イベントに彼も当たったってことを話してきたのである。まさかこんな三次元で満たされているこの男が、二次元オタクだとは、最初は到底信じられなかった。だが、話しているうちに、めちゃくちゃ意気投合して、それからはよく話すようになっていったのだった。
まぁ、春樹と仲良くなったことで、春樹の情報目当てでくる女が近づいてきたこともあったが、春樹君ってどんな趣味?とか聞かれて、声優のなになにさんが好きなんだよっとかいうと、お前の趣味なんか聞いてないし、てかキモッ、とか言われて女性がトラウマになったこともあったのだけど。
そんな感じで、春樹も声優イベントに行くってことを知って、誘おうと思ったのだが、その時もやはり緊張してしまって、放課後、春樹を呼び出して、わざわざジュースを買って、そして、三十分ほどくだらない話をした後に、
「声優イベント、一緒に行ってくれませんか。」
と勇気を出していった。
此れでは春樹に恋している乙女のようである。我ながら、思い出して文字に起こすとそうとうに恥ずかしいものがあるものである。
それも、更に恥ずかしいことに、その言葉のあと、春樹にはこんなに笑うかってぐらい笑われたのだった。
と、そんなことがあって、それ以降、僕らはそういったお願いごとや悩み事のときには、ジュースを奢って、そして話し出すようになったのだった。
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