第08話 僕とパンツと事件たち

 毎朝妹と彩女と学校に通うのが日課となっていたが、その日もふつうに学校に行き、席について、それから一息ついた後、俺は隣の春樹がくるまで何も考えないみたいな顔してくつろぎ、彩女が隣の友達の立花さんとお話しているのを見ながら、朝のパンツチェックをするのが日課だった。

 ただ、その日の彩女のパンツはいつもとは違っていた。

 正しく純白の白。子供っぽい柄はどこにいったのか、全くデザインも何も無い、白。白一色なのであった。

 ここまできて、諸君は、1日ぐらい女の子が違うパンツ履いてきていたってたいして疑問にも思わないだろって思うかもしれない。しかし、彩女は常に子供っぽい柄が大好きで、家の小物から何から何まで子供っぽい柄で、それを僕や、彩女のお母さんから馬鹿にされても、怒るけどそれを変えてこなかったほどの、子供っぽい柄好きなのである。


 なのに、何故、なぜあの彩女が白を履いてきたのか。


 こんな疑問の中で、すごい顔で見つめていたのだろうか、彩女も立花さんもこちらを見ていて、急いで目をそらした。けれど、その日はひとまず、落ち着きを取り戻して、1日ぐらい、この歳ならおかしくないかな、って思い考えなおしたのであった。


 だが、次の日も、その次の日も白なのである。

 僕は真剣に悩んだ。人生ここまで悩んだことなどないかってぐらいに悩んだ。

女性がパンツを変えるときってどんな心境なのだろうか。もし、彩女が子供っぽい柄から白に変える理由があるなら、それは、まさか…

 好きな男性でもいて、見られた時に笑われた、とかか?

 まさか、そんな、そんな話は彩女からは聞いてないし、でもわざわざ話すことでもないし、隠しておいてもなにも不思議なことじゃないし。でも絶対に聞けないのであった。


 普通なら誰かに相談もできたであろう。噂で話が流れてきたりするもんだろう。しかし、全然そのような噂は耳にはしないし、誰かに話を聞こうにも、変わった点がパンツの柄だけ。それも、誰にもどうやってパンツを見たかなんて言えやしないのである。だいたい、白のパンツからくまさんの柄にパンツが移ったというならともかく、それが逆なら普通の成長過程として正しいのである。寧ろ成長したと考えるのが当然の判断だろう。きっとそうに違いない。

 そんなふうにごまかしながら状況が変わらぬまま三日が経った。

 そして、さらなる事件が重なり、状態はさらにややこしくなってしまった。

 『立花紐パン事件』である。


 その日、彩女のパンツが気になりながら、いつも通り確認しようと、僕の脳の神経をまさに覚醒させようとしたその瞬間、立花さんがいきなり彩女の目の前に立ちはだかってしまったのである。

 ここまで覚醒した神経で今更能力を使わないことはできない。空間は、立花さんのスカートと、そして、僕だけになり、そして、三秒ほどあと、立花さんのパンツの柄が、脳内にインプットされる。


 紐パン、か。


 え?嘘だろ?流石にやばいものを感じた。あの超絶美人立花さんが紐パンをはいているだと?これはやばいのである。エロいのである。いままで柄は変わってきたけど、模様も変わってきたけど、普通のパンツを立花さんは履いていたのである。その立花さんがまさかの紐パンである。僕の想像力が前回である。立花さんに何があったのだろうか。今日誰かを誘うのでしょうか。

 予想外のパンツに、僕は思わず、立花さんの顔をみる。顔が赤くなっているのを自分でも意識する。あの立花さんがそれを履いているってことを思うだけで、おじさん、興奮が収まらないよ!それもさらにその立花さんが予想外の行動をしてきたのである。立花さんが僕の方に近づいてきて、そして、僕の机の目の前に止まり、そして、僕に手紙らしきものを手渡してきて、耳元で、放課後に屋上に来てくれるかしら、なんていうのである。同い年なのに、大人のお姉さんのようないい香りが漂ってくるのである。もう興奮しすぎて語彙力もなにもこんな曖昧な感想しか思い浮かばないのである。というか、一回も話したことがない立花さんが、紐パンはいて、僕を何故誘っているんですか?一目ぼれですか?僕に春が来たってことでいいんですか?春、万歳!

 もう意識が飛びそうになりながら、頷くのが限界だった。その後の授業も完全に上の空。ラブレターに紐パン。もう、正しく、僕は卒業目の前!このまま卒業後に昇天してしまいそうだった。春樹は、何故かニヤニヤしていたが、まぁ今の僕よりもニヤニヤ出来るやつもいないだろうな!そう思いながら過ごしているうちに放課後になった。

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