ブタ

ローズが眠って、俺はCフォンを見つめていた。


【嘘つき、嘘つき】


「ブタ、何のようだ」


【ローズに嘘をついてる】


ローズを好きなブタは、怒っていた。


「ついていないよ」


【お前は、桜木杏奈に恋をしている】


「そんなわけないだろ?小便臭い人間(ガキ)だ!」


【嘘だ!ならば、何故、お前から鼓動を感じる?】


ブタに言われて、目を見開いていた。


「そんなものを感じる筈がない」


【嘘をつくな】


ブタは、そう言って俺の肩に飛び乗った。


【ドックン、ドックン】


その音は、ブタの体を通して聞こえる。


「やめろ!モノマネ名人」


俺は、ブタを肩からおろした。


【ローズと結婚するのは、お前にとって最高な出来事だ】


「わかってる」


【ローズは、この場所のスターなのだぞ】


「知っている」


ローズは、胸までの赤毛の髪に愛らしいくりりとした目にポテッとした唇。死神界のアイドルだと言われていた。俺は、ずっとローズを好きだった。


【お前が、本気だから皆、ローズを諦めたのだ】


ブタは、俺の顔を覗き込んだ。


【桜木杏奈は、諦めろ!お前は、ただあの日の自分を投影したにすぎないのだ!わかるか?リゼ】


「ブタ……」


【もしも、桜木杏奈を助ければリゼは死しかないのだ!わかるだろ?】


ブタは、そう言って肩にまた乗った。


【ローズを悲しませるな!リゼは、勘違いしているだけだ!ルカもローズも悲しませるな!リゼ、もう忘れろ】


珍しく、俺の頬に頭をつけてきた。


【ルカには、リゼが必要だ!ローズにもリゼが必要だ!悪い事は言わない。婚礼までには、気持ちを処分しろ!わかったな】


「わかったよ!ブタ」


ブタは、消えた。


俺は、Cフォンを見つめていた。


桜木杏奈の画像に触れていた。ない筈の鼓動を感じている。


そう、この日からあの日へ向かうカウントダウンの14日間が始まった。


俺は、この鼓動の意味が知りたかった。


死神界こっちにやって来たら、心臓は神の元に還されるのだ。


人間に生まれ変わるものは、原則心臓が入ったままだ!


しかし、死神を選択した魂は神様へ心臓が還される。


だから、鼓動など感じる事はないのだ。


俺は、胸に手を当てる。


ドックン、ドックンと僅かながら聞こえてくる。


桜木杏奈の画像を見ると、ズキズキ、キリキリと痛みだすのだ。


やはり、この気持ちを消さなければローズとの結婚は出来そうにないのがわかった。


俺は、Cフォンを壁に置いた。


ローズが、眠るベッドに入る。


そうだ桜木杏奈との、14日間の話に行く前に、先にローズとの話をしよう!


そうだな、それがいい…


俺は、ゆっくりと目を瞑った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る