選択

「どちらを選択しますか?」


選択権を握りしめながら、神のしもべは笑っていた。


「えっと…」


「二回目ですよ!説明聞きますか?」


「はい、ごめんなさい」


「ほらほら、言いすぎです」


優しい女の人は、僕を見つめていた。


「えっと、平本一樹ひらもといつき君、君は、両親を殺害しました。覚えてますね?」


「はい」


「そして、逮捕はされなかった!それも、覚えてますね?」


「はい」


「それから、4か月後…。ボールを追いかけ事故死しました。覚えてますか?」


「なんとなくですが…」


「そうですか!そこで、寿命が終わり。君は、ここに来ました」


「はい」


そう言うと女の人は、二枚の紙を差し出した。


ざいを犯した子供は、生まれ変わるか死神になるかを選べます。君は、どちらがいいですか?」


「生まれ変わるとどうなりますか?」


「同じ人生を味わっていただきます」


「同じ人生?」


「そうです。君は、虐待を受けるのを決められている魂ですから」


「そんな魂があるの?」


「残念ながら、たった数年では変えられません。君が、後9年生きていればリセットされました」


「9年?」


「はい、10年周期で一旦リセットされるのです。だから、後9年は必要でした」


その人は、残念そうに首を振っていた。どうやら、二十歳になるまで生きなければならなかったらしい。僕は、もう一度あの人生を選ぶのがどうしょうもなく怖かった。


「死神を選べば、殴られない?」


「勿論です」


その言葉に、「死神になる」と言ってしまったのだった。


「わかりました。では、これを持って左に進みなさい」


そう言われて、黒い紙を渡された。


左に進む…


「死神ですかー」


老眼鏡をかけた、おじいさんが座っている。


「ちょっと、痛いからね」


「はい」


そう言って、ズボっと胸に手を入れられる。


ドックン、ドックン…取り出した僕の心臓を小瓶に詰める。


「じゃあ、左手出して」


「はい」


左の手首の裏に、ガッコンと機械で、バーコードがつけられた。


「これで、今日から君の居場所がわかるから!次に進んで」


そう言って、隣に行く。


「どれどれ」


綺麗な男の人が、僕の頭を触っている。


「そうだなー。君は、リゼだ!」


「リゼ?」


「銀色の髪に、ロゼ色の前髪!直感で、決めたよ!リゼ、これが君の名だ」


「リゼ」


外人みたいで、カッコイイと思った。


「それじゃあ、手続きをして!」


僕は、その黒い紙を渡されて隣に進んだ。


「リゼ、明日から死神としての全てを学びなさい!」


そう言って、女の人は僕の肩を叩いた。


気付くと真っ白なスーツに着替えていた。


「ようこそ、死神の世界へ」


そう言って、笑ってくれた。

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