産まないでくれ

「お願いだ」


「嫌よ!これが、最後のチャンスかも知れないじゃない」


俺は、ポケットからCフォンを取り出した。死神界のスマホだ!


ルカは、覗き込む。


「ヤバイ、こいつ鬼畜じゃん」


「酷い、言い方すんなよ」


桜木杏奈と青井俊樹は、5度の流産をしている。


「交際期間は、8年だってさ!」


ルカは、煙草を消しながら言った。


「同じ魂が、入り続けてるか」


俺は、赤ん坊を見つめていた。


赤ん坊の手首には、白の輪っかが5つぶら下がっている。


「桜木さんは、鋭いね!あの子は、もう輪廻出来ない」


俺は、ルカに言われてある言葉を思い出した。


「六回死した赤子は、二度と今世を渡れないか…」


「そうだな!今回が終われば、もう永遠にあの魂ちゃんはバイバイだ!あーん」


ルカは、隣でさくらんぼを食べ始める。


バイバイか…


今までの俺なら、どうだっていいやってしまえ!って思っていた。


だけど、杏奈を見てるとそうは思えなかった。


「お願いだよ!杏奈。今日中に、おろしてくれよ!」


「あの子には、産ませるんでしょ?じゃあ、何で私だけ駄目なのよ」


「杏奈、言うこと聞いてくれよ」


「俊樹は、私を愛してないの?」


「セフレは続けよう!なっ!杏奈」


ルカは、隣で「クソだ」と言って笑っていた。


セフレって、また杏奈が妊娠したらどうするんだ?


「セフレって何?また、赤ちゃんが出来たらどうするの?避妊してくれるの?」


「避妊なんかしないに、決まってるだろ!杏奈が、ピル飲むなり、またおろすなり出来るだろ?」


ルカは、それを見つめて苦笑いを俺に向ける。


「世も末だな!」


そう言って、笑った。


「桜木は、何でこんな男のどこがいいんだろうな?」


「興味を持つのか?」


「いや、持たない」


「やめとけ、小便臭い人間ガキなんかに構うなよ」


「そうだな」


俺達は、人間年齢推定600歳だ!33歳など、ただの赤ん坊なのだ。


「酷いわ!俊樹、私を何だと思ってるの」


「杏奈の事は…」


「やめろ!」


俺は、ルカの頭を叩いた。


「見たか?今の…」


「だから、出すなよ!あいつの頭の中」


「やべーな!あいつ」


頭の中は、こんな話をしてるのにナニの事しか考えていない。


その上、地上波ならピーとつけられそうな卑猥な単語にまみれた低俗な頭の中を可視化させられていた。


「○○○って何?」


ルカがその単語を指差して吹き出しそうになった!


「何?リゼ」


ルカは、こんなに長く死神を続けていながら性に詳しくない。


「それは、大人の玩具でだな!」


「で、この桜木さんは何だと思われてるの?」


また、それを指差した。


「いやー、それはだな!」


ルカは、興味津々に俺を見つめていた。



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