リゼの話

出会い

桜木杏奈さくらぎあんなに出会った日は、よく覚えている。


「杏奈、ごめんなさい」


「どうして?俊樹。酷いわ」


「本当に、ごめんなさい」


杏奈は、最後まで拒んでいた。


俺は、それを見つめていた。


男の名前は、青井俊樹あおいとしき


共に、33歳だった。


俺は、魂の回収を行ういわば死神だ!


俺が、いる理由は何って?


杏奈のお腹の赤ちゃんの魂を持って行く為だった。


「俊樹、嫌よ!一人でも、私は産むわ」


「駄目に決まってるだろ?彼女が許さないんだ」


青井俊樹は、桜木杏奈と二股交際を続けていた。


彼女の名前は、三井百合子28歳!青井俊樹の会社の社長の娘だ!現在、妊娠6ヶ月。


杏奈には、百合子と別れたと言っていたのだ。


杏奈のお腹の赤ちゃんは、4ヶ月だった。


「クズだな!」


「ルカ!時間がかかってすまない」


「いや!」


ルカは、魂を小瓶に納める能力を持っている。


そして、使いのブタ。


実際は、カラスなのだが…。


何故か、俺とルカのペアにはピンク色のカラスがやってきた!


それで、俺とルカはブタと呼んでいた。


「後、三時間で決着をつけてくれよ!青井さん」


ルカは、青井俊樹の肩をポンポンと叩いた。


運命とは、皮肉なものでここで杏奈の赤ん坊を殺さなければ百合子の赤ん坊が死ぬのだ!


俺は、煙草に火をつける。


「同じ男の子供が同い年になっちゃいけないって、何とも不思議なルールだと思わないか?」


ルカは、俺のポケットから煙草をとると吸いだした。


「秩序を乱したらいけないって話だろ?」


「そんなんでいいのか?リゼ」


俺の自己紹介を忘れていた俺の名前はリゼ。魂を一度も取り零したことのない天才だ!


「大丈夫だよ!杏奈は、中絶を決断する!まあ、ゆっくり待とうぜ」


俺にとって、この仕事は余裕だ!何故なら、腹ん中にいるやつは、喋らないからだ!


「リゼ、こないだのおっさんはうるさかったよな」


「あれは、本当に大変だった」


「いつ死ぬんですか?今死ぬんですか?今は、困るな!出張に来てるからとか言ってたな!」


「ああ、大人はだいたいあれをしてからとかこれにあってからとかうるさいからな!」


俺は、また煙草に火をつける。


俺達の姿は、死ぬやつにしか見れない。


だから、好きな事をして待てる!


強者になると、飯を食いながら待ってたりする!


あっ、もっとヤバイやつがいた!恋人とナニしながら待ってたわ!


「青井さん、説得もっとしなきゃー」


ルカは、そう言ってまた俺の煙草をとっていた。


「杏奈、産まないでくれよ」


頭を下げ続けている。

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