第6話

「その……まだ私、オリバーの気持ちを直接聞いてないんだもの。婚約はせめて、オリバーの気持ちを聞いてからにしたいって両親に頼んだの。それからラスティン家側にもお願いしたら快く受け入れてくれたわ」

「へえ。まあラスティン家もオリバーがオフィーリアと婚約できるなんて願ってもないだろうしね。でもオリバーの気持ちを聞いてからだなんて、めちゃくちゃ未来にならない?」

「それも想定内よ。どのみち高等部を卒業するまでは結婚するつもりないし。卒業までの間、私もオリバーも他の誰かと婚約しないで済むならそれで良いかなって。……つまるところ、私のわがままね」


 婚約だけして、後から気持ちを聞いたっていいのだ。しかしそうではなく、いつも意地悪しか言ってこない彼の気持ちをきちんと聞いてから婚約するという順を踏みたいと思ってしまったのだから、しょうがない。


 そんな私の気持ちを知って、アーロは「そっか」と呟いた。


「じゃあ俺はとにかく二人が早く気持ちを正直に言えるように陰ながら応援しておけば良いかな?」

「そうね。温かい目で見守っててちょうだい」


 ふふ、と私たちはお互いに微笑み合った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る