第11話

こんな私であるが、大学時代に再び彼女が出来た。

しかし、今思うと出会わないほうがよかったのかもしれない。

人はある程度幸せになると、不幸への耐性がなくなるものだ。


彼女とは大学2年生から5年ほど付き合った。

5年ともなると社会人になっていた私は当然結婚を考えていた。

特に大きな問題もなく私はそれを疑いもしなかった。

しかし、ある日突然別れを告げられた。

理由を聞けば単純であった。

会社でよくしてくれる先輩がいるとのことだ。

私は心底自分を馬鹿だと思った。

別れを告げられて悲しんでいる自分が、なんとも弱くなったものだと思ったのだ。

人間が嫌いと言っていた私が、ぬるま湯のような空間にいたせいで絶望に対して弱くなった。

ある意味そのことを知れたのはよかったことかもしれない。

しかし、それがあってからは本当に生きる意味というものがなくなった。

これで心置きなく死ねるというものだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る