…
手を引っ張られながら散々走らされて、くたくたになっていた頃、急に目の前にいる誰かの足が止まった。
「ちょ、ちょっとっ…ここどこですか?」
「ワイん家だけど?さっき話したじゃんか。」
「え、本当に来たんですか…!?」
「本当に来なかったらわざわざ手引っ張ってまで走らないだろよ…」
「まぁ、そうですけど…」
「あ、そうそう、ワイ1人暮らしだから。」
「え…は、早くないですか…?」
「親がいないんだよ。」
「…ん?え、えっと…聞き間違えじゃなかったら、親がいないって言いました…?」
「おん、間違いなくそう言った。」
「───いろいろ言いたいことがあるんですけど…」
「…長くなりそうだから、とりあえず中入れよ、ほら。」
「あ、えっと…え?」
「いいから!早よ入って!」
「うわっ!強引はやめてくださいって!…というか、ここ…汚すぎませんか?」
「なんか文句でもあるのか?」
「たくさんありすぎですよ…!そもそも、何でそんなに髪長くしてるんですか!身だしなみがおかしいですよぉ!!マスクは室内なのに外さないし、私は名前をわざわざ言ったのに、あなたは名前教えてくれないですし!!しかも、知り合ってすぐなクセにタメ口使いますし!!それに、初対面の私にこんな…片付けてもいない所に連れてくるって本当に何なんですかっ!?もう何でこんなっ───」
「一旦ストップしてくれ…良く分かったから。玄関と廊下はちょっとあれだけどワイの部屋はきれいだから、な?」
「分かりましたよ…どこにあるんです?」
「ここ。」
「えっと…開けて良いですか?」
「というか早く開けてみ。」
「あ、あぁはい…」
ガチャ…ゆっくりと扉が開いた。
「うわぁ、本当に綺麗ですね…」
「だから言ったろ?…あっ、ちょっと座って待っててくれ。」
「あぁ…はい。」
そう言って部屋を改めて見てみた。確かに結構綺麗にしている。が…隅に貯まっている埃がどうも気になってしまう…まぁそれ以外なら綺麗だ。後は…オタクな感じは醸し出している。私もオタクだけどね…隠してるけど…あっ待って…推しだ…ビジュ最高…ずっと見てられるわぁ…
「どした?」
「…いや何でもないですよ?」
「レモンってオタクか?もしかして。」
「…」
「いや、さっき扉の間からちょっと見てたんだけど…その感じだと図星か。」
「誰にも言わないで下さいよ…?」
「はいはい。わーったよ。」
「…ていうか、何で見てるんですかっ!?」
「別に。」
「何ですかそれぇ…!」
「まぁまぁ…ミルクティー飲むか?」
「───飲みます。」
「ほら、これ。」
「…」
長い沈黙が部屋の中を包んでいく。
「…なぁ。」
「?」
「ワイは…人に見えるか?」
「え…何でそんなこと聞くんですか?」
「───聞きたいか?本当の事。」
「…」
「…今だから言おうと思ったんだ、だからもう…今聞かなかったら一生言わない気がする。多分、ワイは…そうする。」
「…そこまで言うなら聞きますよ。だってそんなに聞いて欲しいんでしょ?」
「…」
「なんかヤらせみたいだな…ははは…。…何でこんなことワイが言うんだろ。じゃあ話すか…というよりは見てもらった方が早い。」
「見た方が早い…?」
頭が情報の多すぎで理解しきれていない。今起こった事が夢みたいな感覚。なのに…なのに…既視感があった。
物語はあなたの中に。 イチゴアイス @itigoaisu
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