物語はあなたの中に。
イチゴアイス
え?
私は逃げた。必死に逃げた。逃げてるのは…現実かな、簡単に言うと。旧校舎の屋上を目掛けて全速力で放課後の廊下を走る。まだまだ暑さが抜けない9月の風を感じながら、うっすらと汗をかく。はぁ…はぁ…よし、あとちょっとだぁー!…早くあのベンチでお気に入りの小説をっ!
「よし!うっしゃ、自由だぁー!」
「───待って…ウソ、なんで…」
「なんでここに人がいるんですかぁ!!?」
「なんでって…こっちが聞きたいんだけど。…なぁ…生徒会長さんだろ?真面目で皆様から慕われてるさ。そこのバッチで分かった。ていうか、そんなあんたがこんな立ち入り禁止のところで叫びながら入ってくる方がおかしいぞ?」
「うっ…何なんですかっ!誰ですか!髪長過ぎだし!何でもいいから名前を言って下さいっ!まずはそ、そこからです!」
「うわぁー、教室ではおしとやかで優しいのになぁ…めちゃくちゃ猫被りしてるわー」
「だからっ…!本当にぃ…!…はぁはぁ…ちょっと疲れた…」
「あーあと、このまま飛び降りるから邪魔すんなよ?」
「え?」
「そうだけど?」
「ちょ、ちょっと!なんですかそれ!自殺じゃないですか!」
「だからさっきからそう言ってるぞ?」
「やめてください!そんなこと!」
「邪魔すんなって言ったろ?…ったく、せっかくここまで挫折しないで来たのに。責任取れ。死ぬ気が失せたぞ?あんたのせいで。」
「…どういうわけです?何で…さっきまで死ぬ死ぬ言ってたのに。」
「死ぬ気失せたんだよ!」
「は、はぁ…なるほど…」
「何言ってるんだこいつって目で見んなよ!?…はぁ、もうめんどいなぁ…───あ、そうだ。」
「?」
「あんた、ワイのこと殺してくれよ。さっきの責任な?」
「え?」
「殺すんだよ、あんたがワイを。」
「え?」
「だーかーらー!ワイを殺せ!」
「…本気で言ってるんですか?」
「おん、そうだぞ?」
「というか…名前も知らない人に自分を殺せと言われても…」
「あぁ、もう!わーったよ…でも、ワイの名前は教えない。絶対に。覚えたところで意味ないからな。じゃあ名前…教えてくれよ。」
「え、えっと…名前教えてくれないんですか?」
「断固拒否。」
「うぅ…じゃあ名前教えてますけど…笑いませんか?」
「名前で笑うやついるのか?笑うわけねぇだろ。」
「分かりました、はぁ…高輪檸檬です…」
「どこに笑う要素があるんだよ、タカワレモンだろ?…じゃあ、レモンでいいか?」
「えぇ、いきなり名前呼び…?まぁ、なんでも良いですけど…」
「…あーそうだ、さすがにワイを殺してくれるし…殺す準備してくれたら、レモンの言ったこと、なんでも言うこと聞くわ。」
「え、本当になんでも?」
「本当になんでも。」
「…よし、気を取り直して…なんかこの後とか予定ある?」
「特には、ないです。」
「じゃあ今すぐワイん家来て。ほら、すぐ近くだから」
「ちょ、ちょっとぉっ!?強引には卑怯ですよぉぁ!!」
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