第七話 訪問

少年と初めて遊んだ日から、十年の歳月が経ちました。


もう少年は、青年と呼ぶべき年でしたが、大蛇は、何年たっても、少年と呼んでいました。


大蛇は非常に退屈していました。


大蛇はもう一年も、少年と遊んでいませんでした。


大蛇は退屈しすぎて、今朝食べた山羊の味もわかりませんでした。


大蛇は少年のことを考えました。


少年と過ごした楽しい時間を思い出します。


小一時間後、大蛇は山を下りました。


少年に会いたくて、たまらなくなったのです。


大蛇は村につきました。


外から村を見渡しましたが、少年を見つけることはできませんでした。


仕方なく、大蛇は、人に聞いてみることにしました。


村を這い、人を見つけると、少年の居場所を聞こうとしました。


ですが、人々は大蛇を見ると逃げてしまいます。


何度話しかけようとしても、人々は、大蛇を見ると一目散に逃げてしまうのです。


大蛇はだんだんイライラしてきました。


そして疲れてもいました。


次に、人を見つけた時、大蛇は逃がさないようにと大声を張り上げました。


「少年を知らないか」


すると、そこにいたほとんどの人が逃げてしまいましたが、一人、まだ四歳くらいの子供だけ、逃げませんでした。


大蛇は、これで少年の居場所がわかると思いました。


早く少年と会いたいという思いでいっぱいでした。


大蛇は、子供に少年の居場所を聞きました。


しかし子供は、大蛇の言葉を聞かず、泣きわめいていました。


大蛇はもう二、三度聞きました。


しかし子供は、泣きわめくばかりでした。


大蛇は怒りました。


少年に会いたいだけなのに、なぜ居場所を教えてくれないんだ、なぜ邪魔をするんだという気持ちになりました。


大蛇は怒りで何も考えられなくなりました。


少年に会いに来たのに、少年には会えず、大蛇が鱗をはいでまで助けた村人たちは、大蛇の話すら聞いてくれません。


子供の泣き声が、大蛇の耳に響きました。


「うるさい!」


大蛇は子供を尻尾で打ちました。


何もかもどうでもよくなり、山に帰りました。

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