〈考えるアシ〉

 2016年11月から、岩手県滝沢市の老健施設へ通い始めた。

「これを使ってください」と渡されたのは、ふくろうのロゴが描かれた施設長用の名刺。

 それからは、「施設鳥」を自称している。

 赴任当時、洒落のつもりで提出した「通所リハビリ利用票」――。

「利用者:68歳男性、盛岡市在住。最近の状況:東日本大震災後に被災地で医療支援をしていたが、心身の疲れもあって南三陸町を離れた。利用目的:体力維持とボケ防止。本人の希望:運転免許証返納までは、通所リハビリに通いたい。目標:生涯現役医師。利用回数:週5回」

 施設鳥のリハビリは、運動しつつ考える「ながら法」だ。これは、「足の鍛錬で転倒予防、脳の鍛錬で認知症予防」と、一石二鳥の優れものでもある。

 リハビリ室が空いているとき、筋トレをやりながら、短歌やシルバー川柳をひねる。五七五……と指折り数えられるよう、下半身用のマシンを使うのがコツ。


趣味とはれ「短歌」とこたふれど未熟者ゆびをり数ふるななつむつやつ


馬手にペン弓手ゆびをる歌詠みぞボケ予防とてバイタスクせむ


葦を足、パスカル嘆く誤変換


パスカル君!考える足だ人間は

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