第3話 夜這い⁉
モソモソ、モソモソ。
とある日の夜。
不意に身体へ重みが加わったような気がして、俺の意識が軽く呼び覚まされる。
「ちょっと何してるのよ⁉」
「何ってそりゃ。お兄ちゃんの腕枕を堪能してるの」
「なっ……抜け駆けじゃない!」
「しぃー! お姉ちゃん声大きい! お兄ちゃん起きちゃうよ」
「はっ、そうでした……私としたことが」
朦朧として意識が徐々に覚醒していき、可愛らしい二つの声が聞こえてくる。
「お姉ちゃんもしてみれば? お兄ちゃんの胸元、すっごいごつごつしてて、あったかいよー」
「わ、私はそんなハレンチなこと……」
「とか言いつつ、本当はしたいんでしょ? ムッツリスケベなお姉ちゃん」
「萌夏ぁぁぁぁー」
どうやら、妹の唯華と萌夏が、俺のベットに忍び込んできているらしい。
まあ、毎朝日替わりで俺のことを起こしに来てくれるぐらい兄妹仲はいいので、恐らく起きる前に少し早く来て、俺の寝顔を眺めに来たといったところだろうか?
そんなことを思っていると、唯華から衝撃的な発言が飛び出した。
「もう……何で私、お兄さんに夜這いなんて仕掛けちゃってるんだろう……」
ん、今何て言った……?
俺の聞き間違いでなければ、聞こえてはいけない単語が聞こえたような気が……。
「今更⁉ もとはと言えばお姉ちゃんが急にお兄ちゃんの部屋に突撃するからこうなったんじゃん」
「それを言うなら、最初に『お兄ちゃんを二人で襲いに行こう』って提案してきたのは萌夏でしょ⁉」
俺を挟んだ状態で、言い争いを始めてしまう姉妹たち。
このままだと、本格的な言い争いに発展しそうだったので、あえて俺は動いてみることにする。
「あっ……⁉」
「しぃ、静かに……」
俺が軽く身体をモゾモゾと動かした途端、二人とも地蔵のように黙り込んでしまう。
少し足を楽な体勢に整えて、俺は再び狸寝入りを決め込む。
薄く目を開けると、部屋は暗闇に包まれていたので、恐らく今は深夜の時間帯であることだけは確認できた。
「お、お兄ちゃーん?」
声を掛けてくる妹に反応することなく、俺は眠っているふりを決め込む。
「寝てるみたいね」
「ふぅ……危なかった」
ほっと胸を撫で下ろす妹二人。
「もーう、お姉ちゃんが大きな声だすから」
「萌夏だって、大きな声出してたでしょ!」
しかし、これ以上言い争いを続けたら、同じ過ちを繰り返すと感じ取ったのか、二人のやり取りが途中で途切れる。
「はぁ……もう言い争うのはやめにして、お兄さんの布団にとっとと入りましょ」
「そうだねー」
いや、ちょっと待って……。
ガチで二人とも、俺の布団に入ってくるつもりなの⁉
モゾモゾとシーツの擦れる音が聞こえてきて、左右に妹たちの気配を感じる。
「お兄さーん、失礼します」
「お兄ちゃん、お邪魔するよー」
おいおい、マジでか。
マジなのか⁉
妹たちが俺の布団に入ってこようとしてるんだが⁉
このまま俺、どうなっちゃうわけ⁉
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