第2話 き せ い
新幹線で3時間。俺は実家へ帰ってきた。
「おかえり。ほんと連絡もしないでどっかでホームレスにでもなってるんじゃないかって心配してたのよ。」
母親は1年前と変わらない笑顔で出迎えてくれた。
「ただいま。相変わらず田舎だね。ここは。」
「1年足らずで変わるわけないでしょ。さ、早く入って。」
そんな軽口をたたきながら家の中に入った。別にお金持ちでも貧乏でもないなんの変哲もない過程である。母と父と3人家族で家族仲は良好。
家族3人で夕食を食べた。久しぶりの家族団欒。
帰ってきたと感じさせてくれた。
「こっちにいる間に、、、お墓参りは行きなさいね。」
母がためらいがちに言ってくる。もちろんそれは俺も帰ってきてからずっと考えていた。
高校2年生の時、雪が死んでから1週間俺は雪のお墓に毎日、何時間も通っていた。そこにもう雪はいないのに、唐突にいなくなった雪を探すように通い詰めた。
それを俺の母親と雪の母親は心配して行くことを禁止された。学業が疎かになりかけていた。
けっきょくそれからは墓参りからも雪からも逃げ続けた。その結果が今だ。今の俺だ。
「そうだな。わかったよ。」
短く返事をして俺は部屋に戻った。
翌朝俺は墓参りに向かった。
恥ずかしい話、少し緊張した。遠距離で付き合っていた彼女に久しぶりに会うかのような緊張感だった。しかし、俺は逃げ続けたこの場所で雪と話す必要があった。
お墓の前に立つと2年経つが綺麗な状態で保たれていた。雪の家族やらが掃除しているのだろう。
「久しぶり、雪。」
話しかける。なんだか心が落ち着いた。そこに雪がいるような感覚になる。
「いやあごめんな。しばらく会いに来れなくて。俺も結構悩んだんだ。ほんと禿げたら雪のせいだぞ。」
軽口を言ってみるがむなしくなるだけだった。
「ほんとお前、急にいなくなっちゃうんだもんな。びっくりするよ。、、、俺さあ、雪のこと好きだったんだよ。、、、薄々気づいてたよな。あはは」
乾いた笑いが出る。涙がこぼれた。
「ほんとやめてくれよ。生きてる間に言いたかったよ。寂しいよなー。急に俺1人残して死んじゃうんだもん。もう、、、ほんと、、、。」
ついには膝をついて泣いた。
意味はない。今こうして話しかけても何の意味もない。ただの独り言だ。けれどすべてを吐き出したかった。
心の壁なんて全部取っ払って思ったことをすべて話した。
「ごめん、、、ごめん、、、けっきょく俺も死んじゃった雪から目を背けようとしたんだもんな。ごめんな。ほんとごめん。」
しばらく泣き続けた。これまで口に出せなかった。
思いを吐き出し体は軽くなっていた。
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