第5話

 1月27日。この日は俺の誕生日。幼馴染と、普段は入れない屋上で誕生日を祝ってもらうことになっている。ここで、俺は、人生の終止符を打つ。今まで、ずっと一緒にいてくれた幼馴染には申し訳ないが、こうするしか無かった。自分が自分でいられなくなると思ったのだ。


 ギイッと音がして屋上の扉が開く。幼馴染が入ってきた。みんなで、最後の晩餐。夕食ではないけど、俺にとっては最後だから最後の食事って意味で使うことにする。


「愛蓮、誕生日、おめでとう」

「おめでとう」

「愛蓮も16か〜」

「親みたいなこと言わないでよ」

 死にづらくなるじゃん。笑顔で、祝われると辛い。でも、今までの日常から解放されるならいいか。


 十分にお祝いをしてもらってから、みんなで空を見た。朝は雪が降っていたのに、今はすっかり綺麗な星空になっていた。その時、ふと思い出した。

「星は、人の生まれ変わりなんだって。」

 気づいたときには、口にしていた。これは、何かの本の一節だ。

 みんなは、そうなんだって何故か納得していた。

「愛蓮はどう思ってるの。それ。」って涼平に聞かれた。「その通りなんだろうなって思うよ。でも、俺は、その人が大切だと思っていた人がなった星が1番輝くって思ってるよ。」と返した。別に深い意味はない。ただ、そんな気がしてたから、そう言っただけ。これが、最後の言葉だね。


「バイバイ、岩西竜也。深道燿。眞田涼平。」

 そう言って、私は、屋上のフェンスを超えて飛び降りた。

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