第4話

 高校の入学式が終わった3日後、またいじめが始まった。高校でも、幼馴染の前でいじめられることは無かった。やはり、3人には気に入られたいのだろう。もちろん、本人達には話してある。でも、彼らは何も言わなかった。やはり、極力一緒にいることしかしなかった。しかし、それで満足するべきだ。彼らも、怖いはずだ。いじめられている人と一緒にいると言うのは、自分がいじめられるかもしれないと言うリスクを負っていることになる。それでも一緒にいると言う選択をしてくれたことを感謝しなくてはならない。


 小学校、中学校でのいじめでは、男装していることやアトピー性皮膚炎であることが原因だった。しかし高校になると、それに加えてイケメンの幼馴染と一緒にいるのもいじめの原因になった。

 さっき行った通り、幼馴染の前ではいじめない。ただ、高校生となればもっと知恵を使うようになる。女子トイレや校舎裏などで、幼馴染に気づかれない様にいじめてきたのだ。もちろん、部活動は違うのでそこでもいじめられた。

 女子トイレや校舎裏では暴力を振るわれ、幼馴染に気づかれぬ様に俺の物を隠し壊しやりたい放題だった。


 今日もまた、同じことをされる。


「愛蓮ちゃん、一緒にトイレ行こ?」

 幼馴染がいるから、いじめると気づかれぬ様に、いつものような話し方で言ってきた。

 こういうことに対して、俺の性格上いいえと言えない。何をされるかわかっていても。

「わかった。」

 今日は、何されるのかな。そう思いながら幼馴染と別れてトイレに行く。一緒にいると言えど、女子トイレまでは行けないから、大体クラスで待っていてくれる。

 トイレに入った途端に、殴ってくる。

「お前さ、目障りなんだよ。」「幼馴染とやらも困ってるんだから、離れろよ。」「お前が1人だと可哀想だから一緒にいてあげてるまでだよ。」とか言いながら。でも、絶対に顔には殴って来ない。幼馴染に気づかれるからだろう。

 まず、幼馴染が困っているのならば、彼らから去っていくはずだ。偽善だとしても、9年一緒にいるわけがない。

 彼女らの気が済むまで殴られた。終わったら一緒にクラスまで帰る。最後までいい子ぶるみたい。

 クラスに帰れば幼馴染に心配される。されたことを話せば、トイレの前で待ってれば良かったって言ってくれたし、困ってないよと言ってくれた。

 こんなことが何日も、何週間も、何ヶ月も続いた。でも、一度も学校を休むことは無かった。そんなやつに、負けたくないから。理由はそれだけ。小学校も中学校もそう言って、休まなかった。

 だけど、10月に、どうしても、学校に行きたくなくなった。いくら幼馴染が一緒にいてくれても、どんなに負けたくないと思っても、流石に精神的に疲れた。だから、10年目にして初めて親に言った。

「学校に行きたくない。」

 でも親は、「行きなさい。休日のまま学校に行きたくないから行かないように思われるから。」と言って、休ませてはくれなかった。月曜日でもあり、そう思われる確率は高い。きっと親は、そう思われるのが駄目だと思ったのであろう。そう言われては学校に行かなくてはいけなくて、渋々学校に行った。学校に行ったら先生に「昼休みに話があるから。」と言われて、昼休みに先生と話すことになった。親が先生に、子供が学校に行きたくないと言われたと電話したらしい。何故、そんなことを言ったのか尋ねられたので、「いじめられているからです。」と素直に答えた。今までのことも、全部説明した。しかし先生は、「学校で対応に関しては検討します。」と言われた。

 結局、叱ることも別室になることも停学になることも何も無かった。つまりは、見て見ぬふりをしたのだ。


 そんなことがずっと続き、流石に限界が来た。もう、自分で自分の物語の終止符を打とうと……


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る