がんばれの魔法 ～キャバ嬢 転生ギャルを拾う～

【Mutual help】

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　染まってきたんじゃなぁい？　陰鬱な曇り空からすっきり爽快青空にさぁ。

　どんどんグチって怒って悲しんで、明日は晴れやかに笑顔で過ごそうぜ！

　そんじゃ次のお便り～。

　ほいっ！　ラジオネーム【路傍のM78】さん。

「グッディさんお初です！　いつもラジオ楽しみにしてます！」

　お初ですーこんばんはー。ありがとねー。

「早速ですがグチです。失敗談となります。グッディさんはきっと失敗なんてしない完璧超人なんだろうなー」

　そりゃあ僕ほどの人間になると失敗しないっていうか、成功からやってくるっていうか、ニケも福禄寿も僕に嫉妬するレベルだろうね。——なに？　うん、そうだね。そんな人間ならこんな寂れた深夜ラジオでクサい言葉をFMに乗せてないね。

　んもう、僕がグチっちゃってどうするの！　続き読むよ！

「仕事で……まぁバイトなんですけど、商品発注の単位をゼロ一つ多く入れちゃったんですよ。それでとんでもない量の段ボールが届いて、店の倉庫もパンパンなんですよ！」

　あーやっちゃいましたねー。あるあるだけど、実際店にも自分にもダメージ大きいよねー。

「大学のレポート作成であんまり寝てなかったのもあるんですが、油断してましたね。慣れた作業ほどしっかりしなきゃって改めて思いましたもん」

　反省偉いぞー。次に活かせるなら、必要な経験だったのさ！

「でも、店長も悪いんですよ！」

　おやおや〜？

「発注作業や棚卸しは店長がダブルチェックするはずなのに、その日サボってたんですよ！

　チェックお願いしまーすって面と向かって伝えたのに。返事もしたくせにあの日店長がパソコン触ってるの見てないですもん！　サボってなくても入力ミスに気づくはずだし、僕に責任押し付ける権利なんかないんですよ！

　発注先もおかしいですよ！　ゼロ一つ多かったら明らかに変じゃないですか！　連絡一つよこしてもいいのに、スルーですよ！」

　あららー連鎖的に。みんな睡眠不足だったのかな？

「少しでも廃棄を抑えるために毎日バイト上がりに商品を一つ買って帰るんです。幸い消費期限は長いしバイト仲間も協力してくれるんですけど、店長は一つも買ってかないんです！　それどころか、僕が買う時わざわざレジ打ちに出てきてゆっくりゆっくりバーコードを当てるんです。酷くないスか！？」

　期限長いと下手に割引するのも不自然だしねー。聞く限り食品みたいだけど、お菓子かなんかかな？

「……自分が悪いのはわかってるんですが、やっぱり腹立つし言い訳して人のせいにしたい自分も情けない。グッディさん、どうかこんなアホな僕に慰めでもお叱りでも、なんでもいいからください！」

　いやーいいですねー。いいグチですよこれは。

　言い訳っていうのは、僕は悪いもんじゃないと思ってるけどね。あれは自分を守る盾だからね。この盾がないとひたすら攻撃を受けるだけでどんどんすり減っちゃうでしょ。

　裁判の様子とか想像してみてよ。当たり前だけど、被告人は自分の立場を悪くしないようにどーにかこーにかしなきゃいけない。弁護人立てて、証拠探しや立証見聞、民事でも刑事でも変わらない。自分に非が無いこと、起きたことには理由があること、なんとかわかって欲しい。

　その過程で他人を持ち出してしまうのもわかる。あいつが悪い！　こいつの責任だ！　それが事実なら自分の尊厳は持ち直すし、攻撃する側に回れるわけだ。言葉の盾は剣に。

　言葉の剣は怖いよ〜？　僕がなんか言うと明日にはＳＮＳで非難の嵐なんだから。先週の放送後は酷かった……もう僕いじけちゃう……慣れたもんでしょって？　はいはいそーですね。

　ま、擁護するようなこと言ったけど、やっぱ人のせいにするのはよくないね。そこはちゃんと正そう。こら！　めっ！

　君は自分のミスを自覚しててそれを悪いと思ってる。この裁判は君の敗訴でもう判決が出てるのさ。被告【路傍のM78】。廃棄処分までの間、毎日商品購入を命ずる！　おっと、もう刑執行済みだったね。

　どんなに腹立たしくても煽られようと店長さんの非は認めてもらえなかった。控訴する？　しないよね？　だって君、負けを認めてるんだから。まぁこの裁判ってのは例え話だけどね。裁判官も弁護人もいないし。

　でも傍聴人はいるよ。僕？　僕は違うよ。朝のニュースで判決を知った視聴者だね。へーそんなことが、ってあまり関心がない寝起きの男だよ。リスナーのみんなも同じかな。

　傍聴人は君のバイト仲間たち。店内という狭い裁判所の非公開裁判を傍聴してたはずさ。彼らは君を知り、店長さんを知り、自分たちの意思で身の振り方を選んでく。彼らはどうしてる？　廃棄待ちの商品と小銭を持ってレジ前に並んでるんだろう？

　君は敗訴したけど、君の刑期を早めるために行動する誰かがいるんだ。この事実で、テレビの前でぼーっと聞いてた視聴者はどちらの肩を持つのかな？

　同じくぼーっとしてた僕が言いたいことは一つ！　店長さんには変なあだ名つけてやればいいよ！　仲間たちと裏で指差して呼んでやれ！　やーいやーい短足ＤＪ！　ハの眉坊主！　整形失敗クソブ男！　

　おっと、今のはアンチが付けた僕のあだ名だった。整形なんかしてないからね。やったのはプチだから。一重を奥二重にしただけだから。あと鼻にシリコン入れただけだし。最近はヒゲ脱毛もしてるよ。いずれ全身に着手したい。

　そんじゃネクストチューン！

【江ノ島カンファレイルサガ／友達都市】。

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